忘れられない少女の話【鬼滅の刃】

14.もし ページ15

「…あれ、時透さん？」



時透さんの抜けた穴を埋めるべく、柱の任務を幾度となくこなしていた私

ここ１週間任務続きで、全く時透さんのお見舞いに来れていなかったので少し寄ってみる事にした

だが、病室はもぬけの殻で時透さんは居ない


…まだ怪我は治り切っていない筈なのに、何処へ行ったのだろう

まさか、刀を振ってるんじゃないか


そう思い心配になり、少し蝶屋敷のあたりを散策する



「…です、」



蝶屋敷の裏山へ入ってみれば、微かに声が聞こえた

女性の声だ

少し進んで見てみると女性隊員が時透さんと話している現場を目撃

場の雰囲気から色々察した私は咄嗟に草むらへ身を潜め、様子を伺う


完全に盗み聞きというやつだ



「付き合って、頂けませんか…！」



勇気を振り絞る様にして言う女性隊員を他所に、ぼーっと遠くを見つめる時透さん


私が思うに、彼が口にする言葉は…



「…誰だっけ、君」



ああ、やっぱりかとため息が出た

一般隊士の子だし、１週間も前の事だから覚えていないのも仕方ないが…

今すぐここから出て行って、“前に時透さんが庇った隊士の中に居た子ですよ”って言いたい

そうすれば少しは関心が出るだろうと思ったが、何か“ふーん”で終わる未来が見えてきた


まあ私は空気が読めるから、そんな無粋な真似はしないし取り敢えず今は見守っておく



「先日、助けて頂いて…その、お声かけした事もあります。３日前に病室にもお邪魔させていただきました。あの時は、すぐ帰されてしまいましたが…」



…驚いた、随分と行動力があるなあの子


確かに、時透くんには行動力のある良い子と付き合った方が上手くいきそうだ

きっと色んな事に無関心な彼を引っ張って、沢山楽しい事を教えてくれる



「…ふーん、思い出せないからまあ良いや。話はそれだけ？」

「えっ、あ、はい…！」

「そっか、じゃあもう戻るね。君もこんなところで油売ってないでもっと強くなれば？」



蝶屋敷へ戻ろうとしているのか、踵を返してこちらの方へ歩いてくる時透さん

告白の返事もなく“戻る”と言われて相手の女性は焦り出した



「え、いや…返事は」

「うるさいなぁ、今僕イライラしてんの。鬼殺隊なんだからそんな恋だ何だとか言ってる暇ないでしょ」



そう彼女の目を見て言い、時透さんは再び歩き出す


“鬼殺隊なんだから”


…じゃあ、もし二人が鬼殺隊でなければ

時透さんは、彼女の告白に何て返したのだろうか

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