ヒト、リ ページ12
山田side
早く先へ、先が知りたいと足が早く動く
気持ちはこんなに重いはずなのに
同じものを見るだけなのに
この後に何があるか...本当は分かってるくせに
震え始める手が嫌でもそれを俺に実感させてくる
まるで早くなった俺の鼓動を鎮めるかのように大ちゃんが肩をポンポンと叩いて、まっすぐ俺を見た
大ちゃんは目をほんの少し泳がせながら俺を見つめた
涼介「...分かってる。」
大貴「いや、お前はわかってない。お前は...」
涼介「大ちゃん、俺はもう全部知ってるんだ。皆んなをここへ連れてきた彩海やあいつは俺に真実を話す義務がある。それに...もう戻れない。」
後ろにあった道はまだ存在するけど、きっと戻ることを『誰も』望んでいない
そもそもここへ連れてきたのはあっちの方だ
タダで帰らせて貰えるとは思えないし、帰れたとこで待ってるのはあいつが言ったように破滅だけだ
もうどうすることも出来ない
大ちゃんが俯いて、また顔を上げた...けど、その目は大ちゃんじゃない気がして、寒気がした
大貴「でもそれはお前が望んでいる結末じゃない。そこに何があるか、もうわかってるだろ?」
涼介「...俺は知りたいんだよ、なんで俺たちが『選ばr「違う!!」...っえ?」
大貴「運命でも偶然でもない。必然だ。分かりきってるのになぜその先を知りたい?お前には受け止めきれない。」
俺の言葉を遮るようにそう言ったそいつは、大ちゃんでは無いけど、大ちゃんだった
涼介「...まだ知りたいことがあるんだ。」
何が大ちゃんを瞬間的に変えたのかは分からないけど
大貴「もう一度言う。お前には受け止めきれない。なぜならお前は逃げてきたからだ。お前は繰り返すことで彩海の、仲間の、全人類の死という現実から逃げてきた。それでも『先』を知りたいというのか?」
俺が全部背負うんだ
...もう、覚悟なんてできてる
涼介「...あぁ、そうだよ。」
そう言った瞬間
パアァン
バッッ
どこから来たのか、目の前に電車がとおりすぎた
消えるようにしていなくなった大ちゃんやみんな
全てが通り過ぎたあとそこには何も無く、通り過ぎた電車も、少ししたら塵のように消えた
「貴方たちは沢山いるの。でも分身ではないし、偽物でもない。貴方たちであって、貴方たちではない。そこには確かに、思い出の記憶が存在するの。」
「先へ。」
もう誰もいないのに、俺は、俺の足は後ろを振り返ることなく前へと進んだ
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作者名:有谷 彩涼 | 作成日時:2019年12月4日 9時