名取の隠し事《完結》 (ページ8)

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藍沢side

名取が怒鳴ってどこかへ行った

緋山も周りのナースたちも立ちすくんでいる

無機質で冷たい床にぽつんと投げ捨てられた黄色い聴診器

それはまるで名取の存在そのものをあらわしているようだった

藍沢「...何があったんだ、緋山。」

緋山「あ、いざわ...私...名取に、なにか、した...？」

緋山の手が震えている

藍沢「緋山取り敢えず落ち着け。名取のことをなるべく詳しく話してくれ。」

緋山「今日...名取書類渡して、しばらくしてシーバーで呼んだんだけど来なくて、ちょっとしたら来て、元気なくて、でも名取はなんでもないって。また書類渡して、しばらくしたらまたいなくて、戻ってきて、どこほっつき歩いてたんだよって怒ったらうるさいって...最近なんか元気なかったから注意しとこうかなって思ってたのにたくさん仕事やらせちゃった...！」

藍沢「そうか。名取は少しストレスがたまってたのかもしれない。お前が追い詰めることじゃない。様子をみよ...」

名取「緋山先生！！」

緋山「なと、り？」

藍沢「お前どこに...」

名取「さっきはすみませんでした！」

名取は頭を下げてきた

名取「ちょっと最近イライラしてて緋山先生に当たっちゃいました。本当にすみません！！」

緋山「え、あ、うん、私は大丈夫...」

名取「よかった...皆さんもすみません！ご迷惑をお掛けしました。」

名取は何事もなかったように振る舞っている

それはまわりにいる人間も同じだ

でも名取も皆も気づいていないことがある

みんなは名取が帰ってきたことに安心しているだけであって、名取が長袖を脱いでいることに気づいていない

藍沢「...名取、そのうでのけがはなんだ。」

名取「...へ？...っ！さ、最近料理始めたんですけど全然うまくできなくて～ははは...」

緋山「名取って以外に不器用なんだね～。」

みんななんとも思ってないけどあきらかにおかしい

切り傷はまだわかるが料理しててアザなんてできるか？

心なしか笑顔もひきつっている

藍沢「...名取...」

名取「あ！書類やりますね～。」

緋山「あ、よろしく。」

名取は俺から逃げるように仕事に向かった