名取の隠し事《完結》 (ページ27)

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名取side

俺が全部話終えると藍沢先生が険しい顔をしていた

藍沢「...それは難しい問題だな...俺が名取の父親に勝てるわけがない。」

まぁそうだよな...

いくら腕のいい藍沢先生でも別の病院の、しかもそこそこ有名な医院長に勝てるはずがない

名取「...まぁ俺が我慢すればいい話ですから。病院だってどこも変わらない。父さんがすぐ側で監視していることに怯えるか、常に成功を求められ続けるか。俺には2択しかないんですよ。」

藍沢「この話を知っているやつはほかにいるのか？」

1歳ときからスパルタ教育を受け、たいして外に出なかった上に、俺はこんな性格だ

...頼れるやつなんて、一人もいない

なんだか自分で可哀想になって、思わず少し笑ってしまった

名取「はっ、いるわけないじゃないですか。ただでさえ友達なんて居ねぇのに。」

そう言い放つと藍沢先生の口からは意外な言葉がでてきた

藍沢「友達なんて居なくていいだろ。」

名取「え...？」

藍沢「友達なんて所詮上辺だけの関係だ。友達なんかよりと信頼出来る...仲間がいるかどうかが大切だ。」

正論だな

ま、これがまた藍沢先生のいいとこなんだけど

名取「仲間なんて俺には...」

藍沢「いるだろ、今ここに。」

名取「へ？」

思わず俯いていた頭を上げると藍沢先生と目が合う

藍沢「俺はお前の味方で、仲間だ。それに変わりはない。何かあったら俺ができる範囲でフォローする。安心しろ。」

安心しろ。

その言葉を聞いた瞬間、また俺はないていた

藍沢「な、なんでいちいち泣くんだよ...」

名取「...勝手に流れてくるんです。てか泣かしたのそっちじゃん...」

藍沢「俺は泣かした覚えはない。」

名取「うわ、最低。」

藍沢「なんでそうなるんだよ。」

このやり取りが何だかおかしくて

名取「...ふっ、はははっ」

自然と笑っていた

藍沢「...やっぱお前は笑った方がいいぞ。」

名取「え？」

藍沢「お前の笑顔で救われる人がいるはずだ。辛いだろうが、笑えなくなったら人間最後だ。鬱にだって簡単になってしまう。人前で笑えなくていい。せめて俺といる時ぐらいは笑え。じゃないとお前本当に壊れるぞ。」

名取「...」

藍沢「返事。」

名取「はい...」

藍沢「よし、そろそろ戻るか。緋山が怒る。」

名取「げっ、書類やってない...」

藍沢「俺に任せろ。」

前を歩いていた藍沢先生がこちらを振り返る

藍沢先生の口角が少しだけ上に上がっていた