鶴が７羽 ページ7
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出勤するとデスクには、昨日の1.5倍はあるであろう書類。
それを目にしてはぁ、と肩を落とす。
「深月さぁん、その書類よろしくね？」
「……はい」
家で鶴丸さんに褒められ、少し舞い上がりすぎたのか。いつもの事なのにどん底に落とされた気分だ。
クソババア！なんて怒鳴りたいところだが、行動に移した所で立場が危うくなるのは私の方である。
正社員の上司と非正規社員の私。
立場の差は明確だし、デマを告げ口されたらたまったものじゃ無い。
社会人として、我慢は必要なのだろう。
自分で言うのもアレだが、お偉いさんにご厚意頂いてる自覚はある。「深月さんの仕事スピードは速い」だの「今度のプロジェクトは深月さんの案でいこうと思う」など。正規社員からして大きな仕事を貰っている非正規など邪魔で仕方ないのかもしれない。
ただただ我慢することしか、今の私には出来なかった。
＊＊＊
「……はぁ、」
終わらない。
時計を見ると日付が変わってしまっている。
出る前に昼用にと付喪神の彼にパンの在り処は教えたけれど、夜ご飯は用意していない。
……お腹、空いてないかな。
あれ、付喪神だから食べなくてもいいんだっけ。
……いやでも人間の姿である限りは食べるに越した事は無い。
後少しの辛抱だ。パパッと終わらせて帰ろう。
＊＊＊
「……ただいま、」
帰っても返答は無かった。
寝てる？それとも、人間からの挨拶なんて返事もする価値ないか。
そうリビングまで足を運ぶと彼の姿は無かった。
もしかして、もう寝室へ行ったのだろうか。
昨日は私の寝室を貸したし、今日も同じ場所で寝ているのかもしれない。そう思い、確認…と寝室へ向かったが寝室にも彼の姿は見当たらなかった。
……もしかして、帰った？
まあ手違いで此方に来ただけだからいつ帰ってもおかしくは無いのだけれど。そうならば、鍵が開いていた理由も頷ける。…でも、朝少し話せたからもう少し仲良くなれたらな何て叶わぬことを考えていたのだ。
―――――まあ、それも幻想に過ぎなかった。
と言う事だろう。
仮に彼が帰りたく無いのだとしても彼には帰らねばならない場所がある。
『審神者』なるものは彼を離す気は無いのだろう。
彼を酷い扱いしといて虫のいい話だ。
チラリと見慣れた寝室に見渡せば、目に入ったものに驚愕する。
それは、彼の刀だった。
それは、彼の本体だと言っていた。
そうなのであれば彼は……
考えるよりも先に、私は家を飛び出していた。
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作者名：前河。 | 作成日時：2019年9月7日 23時
