鶴が５羽 ページ5
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衝撃的な出会いをし、夜明けを迎えた。
彼は嫌だ嫌だと駄々こねていたが私のベッドに寝かし私はソファで眠った。
朝起きた時に２つ分の朝食が用意してあったのを見た彼の顔は傑作だった。
彼は『人間』の作った料理は食べたくないと言った。
まあ昨夜のあの様子を見れば人間を憎んでいるのは一目瞭然だ。
何故、そんなに。
顔を顰めて、思い出したくないもののように。
ゴミを見るかのように、私を見るの。
貴方は『人間』にどれ程酷いことをされたっていうの。
「付喪神様、貴方様は人間にどのような事をされたのです──」
一瞬戸惑ったが、好奇心には勝てなかった。
質問したは良いが、彼は最後まで紡がせてはくれなかった。
昨夜のように、刀身を突き付けてきたのだ。
「それ以上言ったら………殺すぞ。
あの女を思い出すだけで虫唾が走る」
彼をこれ程までに追い込んでいたのは私と同じ、女性だったのか。
もしかして、付喪神は『審神者』とか呼ばれる人間に逆らう事が出来ないのか…？
全て私の憶測でしか無いが、彼の行動及び言動で少しずつ見えてきた気がする。
『審神者』と呼ばれる女は、虐待紛いの事をしていたのだろう。よくよく見れば彼の体には消え掛けではあるが痣が見受けられる。
手当てすらしてもらえないのか。
…否、自分で傷つけているのだし逆に手当などするものか。
「…御無礼をお詫びします、申し訳ございませんでした」
昨日同様、付喪神である彼に謝罪の言葉を述べれば若干狼狽える。
彼は付喪神として『審神者』なる者と共に過ごしていて傷付けられたものの謝罪を受けることは無かったのだろう。
私から見て彼はどう反応して良いのか迷っているようにも感じた。
「しかし、人の身を得ている貴方様が食事をしないというのは此方としても心配な点が有ります。
毒味でも何でも致しますので一口でも召し上がって頂けないでしょうか…？」
私の押しにぐぬぬ…と唸る付喪神様。
悩みに悩んだ末に「毒味をするのなら」と了承してくれた。
「……美味い、」
「本当ですか！有り難きお言葉頂き光栄です」
一口、二口と朝食を口に運び呟く彼に思わず声を掛けると「うるさい！何でもない！」と言われる。
………もしかしなくてもツンデレかな？
と、言いたくなったものの口を閉ざす。
折角褒めてもらったんだ、これ以上余計な事を言ってはならない。
でもどうしようもなく、独り身の私の料理を褒められたのは嬉しかったんだ。
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作者名：前河。 | 作成日時：2019年9月7日 23時
