鶴が３羽 ページ3
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「…ごめんなさい、無神経な事言いました」
私の謝罪に、えっ、と顔をあげるその人のその顔はまさに傑作だった。
まさか彼が恨めしそうに呟く『人間』に謝られるとは思わなかったのだろう。
目を見開いて固まっていた。
「……あの、1つ提案があるんですが」
固まっている彼に声を掛ければ 、 ハッとしたような顔になり私を睨み付ける。
コロコロ表情が変わって面白いな、なんて心の中で思う。
「……帰りたくないのならば、私の家に来ます？」
「……は！？」
何言ってるんだコイツは！と言わんばかりに顔を近づけてくるその人。
いや、『人間』がダメだったんじゃなかったんかーい。そうツッコミを入れたくなる程には、彼は無防備だった。
「何度でも納得して頂けるまで言い続けます。
此処は、貴方が居たという2205年でも向かっていたという阿津賀志山でも無いんです。2019年の9月、令和という年号なんですよ。
この時代での刀の所持はいただけない。警察に捕まってしまうのがオチです。
それを免れる為に私の家はどうですか？と聞いているんです。
勿論、貴方が『人間』という存在に不信感を抱いている事は私も理解しています。余計なお世話だと思って頂いて構いません、警戒も解かなくて結構です。検討して頂けませんかね、付喪神様？」
すらすらと述べていく私に圧倒されているような顔をする彼──付喪神様。
最終的には、「お、おう……」と納得して下さったようだ。
彼が持っている刀を隠してもらうのにも一悶着あったものだ。
終電を逃していて歩いて帰るにしても、刀を持っていてはただの不審者だ。
通り魔などで何かと物騒なこの世は警備もしっかりしていて、特に夜遅くのこの時間帯は警官がうろちょろしている。
そんな時に大っぴらに刀を所持しているのは危険なのである。
それなのに付喪神様は言うことを聞かない。
刀は彼本体だという。刀が折れれば彼も死ぬ。
何とも不思議な話だが、付喪神故有り得ない話では無いのだろう。
だから私は彼の刀を何かで包んでもらうことにした。
私がたまたま持っていた新聞紙。それを彼の刀に巻き付ける。私に触られることでさえ嫌だったようだが流石にこれは許して欲しい。
そんなこんなで何とか帰宅する事が出来た。
のだが。
「それ以上言ったら………殺すぞ」
「俺は人間なんぞ大嫌いだ…！」
「俺の仲間達が危ないんだ」
「……ふは、驚いたか？」
「お前だけでも逃げろ！」
私と彼の生活の序章に過ぎなかった。
______________現世に舞い降りた鶴。
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作者名：前河。 | 作成日時：2019年9月7日 23時
