鶴が２羽 ページ2
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よくよく見れば、刀を突きつけてくるその人は体が震えている。
尋常ではない震え方。
私に怯えている……？
「あの、」と落ち着かせようと声を掛けると「黙れ人間！！」と怒鳴られてしまう。
いや、貴方も人間。
それと、怒ってるのは分かったから静かにして欲しい。
もう、零時はとっくに超えているのだから。
「仰っている意味がイマイチ分からないのですが、このままでは貴方銃刀法違反で捕まってしまいますよ？」
そもそも可笑しいのだ。
包丁、ナイフならまだしも、この時代に長い方を突きつけるなんて。
本当に本物かなんて疑いもあるが、本物だった時が怖いので、何も言わず口を噤む。
「捕まる？そんな訳ないだろう、俺は付喪神だぞ」
……「ツクモガミ」？
付喪神って、器物に宿ると言われる精霊の事？
何を言っているんだこの人は。
「いや捕まりますけど……取り敢えず、その物騒なもの下ろしてください。
何だか分かりませんが、此方から貴方に攻撃することはありません」
ギラギラとした赤い瞳で疑い深く見てくるその人は、おずおずと刀を下げてくる。
「………なあ、人間」
「何でしょう」
あくまでこの人は、自分が付喪神だと言わんばかりに私を『人間』と呼ぶ。
「此処は……いつも俺が見ている景色とは違うんだが。此処は何時の何処だ」
「え？此処は2019年9月の東京ですが」
私の2019年9月という年月に眉を寄せるその人。
「2019ゥ？
俺は2205年から1189年の阿津賀志山に向かっていたはずだ」
今度は私がハテナを浮かべる番だった。
2205年？1189年？阿津賀志山？
何が何だか分からず目眩がしそうだ。
「………貴方、何者なんですか」
「だから言っただろう。審神者なるものに顕現させられた刀剣男士だ」
理解力が無いのか？と皮肉を込めた言葉を投げられ、ムッとする。
「理解力の問題じゃなくて信憑性です。
付喪神だの審神者だのこの時代には聞き覚えのないワードばかりなんです。
……それは置いておいて、貴方此処の者では無いのでしょう？家に帰れるのですか？」
ギクリと肩を震わす、その男。
やはりな。
信憑性は無いもの、もし彼の言っていることが本当ならば帰る方法も不明だろう。
「…帰り方、分かんないし。
帰りたく、無いんだ」
帰り方が分からない、それは想定内だった。
しかし、帰りたくない？予想外だ。
「何故？」
「帰っても、審神者に殴られる。夜伽の相手をさせられる」
先程までの威勢は何処へやら。
私のせいだろう。すっかり彼は怯えてしまっていた。
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作者名：前河。 | 作成日時：2019年9月7日 23時
