第60話 ページ13
主人公side
ドアベルの後に姿を見せたのは、愛しの桜乃ちゃん。
長い三つ編みを揺らし、息を切らしてキョロキョロと見渡す彼女は、俺を見つけると頬を赤くさせながら駆け寄ってくる。
うっわ。可愛い、超可愛い。
語彙力の低下が著しいが、それしか表し様がないのだ。致し方ない。
「……っ、Aさん、おおお待たせしましたっ!」
「いやっ、そんな待ってないし。とりあえず座って」
自分の緊張というか焦りというか、なんとか冷静を装って、桜乃ちゃんに声を掛ける。
俺の言葉に、ふにゃりと笑った桜乃ちゃんは、長い三つ編みを揺らしながら向かいの席にゆっくりと腰を下ろした。
その様子を見ながら、手に持っていた煙草を口元に持っていこうとして思い止まる。
桜乃ちゃんの前でバカスカ吸えるかと。
既に山になっている灰皿に煙草を押し付け、コーヒーを口に運んだ。まだ吸える長さなのに捨ててしまった悔しさを滲ませない様にして。
「煙くないか?さっきまで吸ってたから」
「平気です。本当に、Aさんってヘビースモーカーなんですね」
「あー……。まぁな」
「……えぇと」
眉を下げ、上目遣いで見てくる桜乃ちゃん。もごもご口篭りながら動く彼女の視線に、俺はテーブルに両手を付き勢い良く頭を下げた。
「悪かった!」
「えっ?」
桜乃ちゃんの可愛らしい声が上がるが、俺は気にせず言葉を発する。
あいつに言われた様に。
「いきなりキスして、悪かった。
最低な理由だが、あの時、……俺は衝動が抑えられなかったんだ」
俺は顔を上げずにそのまま言葉を続けた。
「桜乃ちゃんよりも年上なのに、身勝手で悪い。
先に手が出て、ごめん。言葉にしなくて、ごめん。
______っ俺は、桜乃ちゃんが好きだ。
俺で良ければ、彼女になって欲しい。俺と、付き合って欲しい」
乙女から言われた。
返信がなかったり来なかったりしたら諦めろと。俺の顔面と、今まで過ごした期間で桜乃ちゃんが絆されていない様子だったら、それはもう一生脈はないと断言された。
『でもね。桜乃ちゃんみたいなタイプは情に脆いの。
だからそこに付け込むのよ。此処に来たってだけで確信を持っていい。そしてAが側から見た感じ誠心誠意謝れて、甘くストレートに告白すれば……』
我が妹ながら恐ろしい奴だと思った。
だからこうして、俺は緩む口元を見せない様に頭を下げたままでいる。
ああ、桜乃ちゃんはどんな返事をくれるのだろうか?
90人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時