第52話 ページ5
桜乃side
そういえば、今日は男子テニス部の地区予選準々決勝の日だった。
きっと試合を勝って、その帰りなんだろうな。
楽しそうな彼らの中に、無愛想なリョーマくんがいた。
いつものそんな光景に思わず目を奪われて、スッと自然と顔の熱が引いたの。
私は自分のそんな感情変化を不思議に思う。
だって、今までだったら絶対に応援に行って、リョーマくんだけを見つめてたはず。
カレンダーにだって応援行く日に印つけて忘れないようにして、誰よりもリョーマくんの試合を応援してたはずなのに、そんな事忘れて私はこうしてAさんと出掛けている。
こんな場面見られて誤解されたらって焦ってもおかしくないのに。
私は驚くほど落ち着いていたの。
「……リョーマくん」
彼の名前を呟いても、さっきAさんの名前を呼んだ時の様な溢れ出る感情はない。
顔に熱が集まることもなければ、羞恥心もない。
今までなら、名前を呼ぶだけでも好きって感情が溢れてた筈なのに。
リョーマくんのテニスをする姿に憧れてた。
あんな風にテニスをしたいって、楽しみたいって思ってて。
『まだまだだね』
リョーマくんが上を目指す後ろ姿が格好良くて。
『ふーん、やるじゃん』
無愛想だけど本当は優しい所も。
『膝伸びすぎ、 肘曲げすぎ、髪の毛長すぎ、へっぴり腰』
そう楽しそうに意地悪してくる所も好きだった。
私が初めて恋をした人。この感情に名前をくれた人。
リョーマくんが居たから壁打ちも楽しくて頑張ろうって思えてた。
私にテニスの楽しさを教えてくれた彼が私がテニスを頑張る理由だったのに、
いつの間にかそんな感情が無くなっていた。
「……そろそろ移動するか?」
Aさんの声が耳に入る。
ハッとして、楽しそうにしている彼らから視線を戻せば優しく笑う彼の顔。
目を細めて笑う姿にドクンっと鼓動が大きく跳ねる。
ボロボロな私に『守ってやる』って手を差し伸べてくれた。
泣いてる私の側にいてくれた。
テニスを教えてくれた、私を成長させてくれた、私に、弱さを見せてくれた。
Aさんを見て、Aさんから貰ったモノを改めて思い出して、じわじわと熱を持つ身体に私は気付いてしまう。
「……っ、はい!」
私、この人に恋をしてるって。
Aさんが好きなんだって、気付いたの。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時