君とわたしのtoccata(トッカータ) (ページ8)

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第5話ページ8

Aside

時の流れは早く、入学式の日が訪れた。

早乙女学園の制服を着て、等身大の姿見の前で胸元の三つ星を調整する。

鏡に写るのは、アイドル活動していたわたしよりも少し幼いわたしが立っていた。
年齢もを弄るとは神とは本当なんでもありな存在なんだと改めて思う。

スカートの長さを調整し、くるりとターンすれば見た目こそ少し幼いけれど今まで通り踊れるし、培ったキメ顔もばっちり。

「完璧。流石わたし」

元々殺風景だった部屋にはすでにこの姿見しかなく、まとめ上げた物は早乙女学園の寮へと運び込まれているだろう。

膝上15センチくらいの短いスカートを翻し、玄関に揃えられた紺色のセパレートパンプスを履く。
踵のヒールを鳴らしながら、もう戻ることのないすっからかんの部屋にさよならをした。

早乙女学園まではバスで行く。

バス停で並んで居れば周囲の視線がわたしに向けられているのが嫌でもわかる。

イヤホンをしてぼんやりバスを待つ。

着いたバスに乗り込み、窓際の席に座り景色を眺めながら早乙女学園までの時間を潰す。

これから原作に戻す為に頑張る訳だけど、何すれば良いんだろうか。

教えられた原作に用意されたヒロインのルートは11個ほどあるわけだが、そのうち1つをどんな形でもいいから辿ればいいと神がいうあたり、かなり深刻な状態かもしれない。

相手がそれだけやり手なのだろうか？

移り変わる景色を、イヤホンから流れるクラシック音楽を聴きながら見つめた。

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入学式は、わたしの知る入学式ではなかった。

頑丈過ぎる人間のハードな登場。
あれがシャイニング早乙女、まさに空想のキャラクターらしい人間。

シャイニング早乙女の登場に、また彼の奇想天外な行動や人間の域を超越している肉体に、もう驚く事はないだろう。

詩音ちゃんの様に柔軟な考えが出来れば、もっと楽だったんじゃないだろうか。

もう、わたしは全てを諦めの目で見ることにする。

入学式を終え、Sクラスへと向かう。

すでに気力的に疲れた入学式後、確認すべき事が1つある。

ヒロインである七海春歌がクラスにいるかどうか。

彼女が居ればルートは3つ消える、いなくても3つ消えるけど。

しかし、転生体の存在をわたしは知らない訳だが、原作に存在しない人間がいればそれが転生体だと思えばいいのだろうか？

ブレザーのポケットに両手を突っ込みながら、Sクラスと書かれた教室へと入った。