[d!]紫煙の感覚を知っている。 (ページ1)

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春が来た。私にとって、大嫌いな季節。
虫が出てくるから、とか花粉症だから、とかそんな理由ではない。まあそれもあるが。
人見知りで、人と上手く喋られない私にとって、新しい人、人、人。
言うまでもなく馴染めなくて、しんどくて、ひとりぼっちだ。
それが嫌で嫌で、どうしようもなく大嫌いなのだ。

そんな私が大学を卒業して入ったのは、そこそこ名のある企業だった。
面接では頑張って積極的に喋った。ここに入れなければ、私は気力を失って自宅警備員になってしまう。
人生を捨てるわけにはいかないので、死ぬ思いで頑張った。
そんなこんなで入った会社は、私にとってあまり良い環境ではなかった。
新人だから、と上司から渡される沢山の書類。
飲み会ではいびられ、とても割り勘とは思えない金額を払う。正直お金が無いので、精神的にも物理的にもしんどかった。
新しい上司にはセクハラ。
優秀な同僚にはパワハラ。
…一体何がいけないのだろう。そんなことを考えても、とっくに答えは知っている。
この性格だ。
素直で毒舌な私は、どうにも人を苛つかせる。それがいけないのだと分かっていても、もう直せない。
直せないから外に出さない努力をしていたら、結果的に喋れなくなってしまった。なんて無様なんだろう。