【イナズマイレブン】Charm and Abandon【オリオンの刻印】 (ページ47)

今日:9 hit、昨日:8 hit、合計:56,240 hit

Last story1-1 ページ47

『A、5歳の誕生日おめでとう。
これはお母さんからの贈り物よ』

黒ずんでいた意識の中で、朗らかな女性の声が耳に入る。
それは、聞き覚えのある声だった。

ふと横を見れば、壁にかけられた日めくりカレンダーに印刷された数字に大きく赤い丸が書き込まれている。

20XX年7月25日、と示された数字に私は小さく首を傾げる。
……なぜなら、私の誕生日は9月20日だからだ。

『わぁ、すてきなお花！なんていうの？』
『ふふ、インパチェンスよ。Aの誕生日花、もっと沢山あるけれどこれが一番綺麗と思って』

そんな声が聞こえ、紙袋に優しく包まれているであろうものを覗き込む。
ガサリ、と音を奏でながら手によって掻き分けられたその先には、紅紫色に輝く花々の姿があった。

……そして、その色には見覚えしかなくて。

『──ねぇ、思い出した？』
「……！」

少しだけ息苦しい感覚が身を襲い、次の瞬間私の周りは全て闇へと成り代わって。
どこかの部屋にあったはずのドアに手を伸ばすも、届くことはなくやがて黒へと飲み込まれてゆく。

やがて全てが真っ黒になったその瞬間、足にはどこかにたっている感覚がなくなって、どこかに浮いている感覚が体を襲った。

『……やっぱり足りないよね』