【イナズマイレブン】Charm and Abandon【オリオンの刻印】 (ページ32)

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Dream story.121 Mitsuru's side ページ32

朱月A……ちっ、あの女。
どうやって三日前の晩飯に混ぜた薬を解毒しやがったんだ。

もし薬が効いていれば、今頃は激しい熱と解熱後には胃の中で炎症が起きるはずだったのに。

「……くそったれ！」

そう小さく叫びながら、ベンチの脚を自身の右足で振り子のように蹴り上げた。

当然、俺がいきなりかかとで蹴ったんだからイナズマジャパンの視線を集めてしまうわけで。

稲森明日人やら氷浦貴利名などの心配そうな視線や、灰崎凌兵や吉良ヒロトのような白けた視線を感じる中。

1人だけ、小さく首をかしげつつ目を細め、俺を嘲う女がいた。
その目は、確実に俺を蔑んでいるものだった。

普段日光を反射する透き通った紫の瞳。
だけど、この時だけ何故か澱(よど)んだ赤色にみえた。

そんな彼女を睨んでいると、気がつけば奴の傍にいる坂野上が寄っていた。

その時にはもう、いつも見せるあの紫の瞳へと戻っていた。

坂野上が、朱月へ左手を伸ばす。
ギリギリ角度から垣間見えるそいつの瞳は、とても悲しそうに見えた。

何をそれから汲み取ったのか、朱月は坂野上のその手を自身の両手で包み込み、オーストラリア戦の時と同じ動作を施した。
…あろうことか、ニックネームらしき言葉を発しながら。

「のっくん、のっくん！」

そう言って、嬉しそうに言う彼女と外見の全く違う少女が重なって見えた。

紫の、髪の短い女の子だった。

『──みっくん！
……えへへ。みっくん、サッカーやろ！』

うっすらと見えた少女は、俺を裏切った少女その者だった。