【イナズマイレブン】Hide and Seek【オリオンの刻印】 (ページ10)

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Dream story.009 ページ10

そのまま手洗い場までいこうとしていた足は、背後から右腕を掴まれたことによって進むのをやめてしまった。

「ま、待ってください！僕とお話しましょうよ！」

「……離して。痛いんだけど」

そっと離されたのを確認した私は、顔を上げないでひっそりと体だけを向かい合わせた。

まだ付けてこようというのなら…あとは、これを言ってしまおう。

「近寄らないでくれるかな。私は、"夜空"が大嫌いなの」

相手の息を呑む声が聞こえ、そそくさと踵を返して再びその場を離れるために今度こそ手洗い場へ向かった。

…夜だけは、どうしても好きにはなれなくなった。

どれだけ願ったって。
どれだけ恨んだって。

夜明けを迎える喜びを感じることを取り戻す瞬間は、もう無いだろう。

次の日が来るのを、ただ早く来るようにしか、もう祈られない。

＿＿＿この能力を与えた神様は、ある意味残酷だ。

何も見たくない。
それが、誰かの幸せだとしても。

何も、感じたくない。
それが、誰かの絶望なら尚更に。

何も、知りたくない。
それが、どうしても誰かを助けられないと知るのなら。

「朱月、だったか。どうしたんだ？」

視界に一人分の足が入り、顔を上げるとそこにはサイダーを手に持ってこちらを見るゴーグルのあの人がいたのだ。

「……鬼道さん。
いえ、なんでもないですよ！では、おやすみなさい！」

無理矢理笑顔を貼り付けて、その場を離れる。

──後ろからひとつの視線が貫いていたのは知らないふりをしておこう。