魔法使いの恋慕 (ページ6)

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「すごく、美味しかったです。」

「そうか、それはよかった。」

空になったお鍋を見て、リンデルさんは満足そうに微笑む。そしてまた、私の頭を優しく撫でてくれる。ふわんふわんと、森の匂いを撒きながら。

さっきお話をしたセルキーちゃんはリンデルさんのお膝ですやすやと眠っている。親子、みたいだなぁ。

なんだか、ちょっぴり羨ましい。

「そうだ、おぬし。魔法使いならば、腕の1本や2本生やせるだろう。」

腕を生やす魔法……？

そんなの知らない。だって、私は森に助けられて使う魔法しか使えないのだから。

「……その類は苦手なのか。なるほどのう。」

私の言いたいことを感じ取ってくれるリンデルさん。

私の考えてること、分かるのかな？

なんて考えていると、リンデルさんが別のお鍋をあたためながら話しかけてきた。

「じゃあ、そこの傷がきちんと癒えたらわしがなんとかしよう。」

「ありがとう、ございます。」

リンデルさんは優しい。まだ会って1日しか経っていないのに、色々なことを教えてくれるし、色々なことをしてくれる。

私は何にもないのに、空っぽなのに。

リンデルさんの方を向く。

リンデルさんは優しく微笑んで、温かいミルクをくれた。

「あったかい……。」

一口飲むと、身体中がポカポカする。とろんとしていて優しい味は、私の心をあたたかく包んでくれているみたい。

リンデルさんも一口含んで、それからハッとした氷上で私の方を向く。

「そうだ、おぬし。名は分からないそうだが、なんと呼べばいいかの。」

名前……。そうだよね、ないと呼びにくい。

「わ、私は空っぽなので、なんでも……。」

「うむ……。じゃあ、おぬしは風の旅人(ブリーズ)だ。風の使い手だから、ブリーズ。どうかの？」

ブリーズ……。素敵な響き、私には勿体ないくらい。

「そんなに素敵な名前を、いいんですか？」

リンデルさんはまたにこりと微笑む。