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第38話 ページ40

A「あのこと?」

私は思わずロネに聞き返す。

しかしロネはそれには答えず、ただ真っ直ぐとシグを見つめていた。
シグはその目に何かを感じ取ったらしく、一度開きかけた口を閉じ、そっと言った。

シグ「うん」


一体何のことなのだろう。
それはサクヤやライアも同じ気持ちだったらしく、二人ともじっとロネを見ていた。


そしてロネは、ある過去の話をし始めた。


*

シグはとある、有名な魔法使いの長男として生まれた。
生まれた時、彼は1人ではなく、妹であるハルと共に生まれてきた。

双子だったのだ。


その事は瞬く間に大勢の人に知られ、誰もがシグとハルの成長を見守り、期待した。


きっとこの子供たちは、偉大な魔法使いになる。

誰もがそう信じ、疑わなかった。


しかし、ある日をきっかけに2人の人生は大きく変わり始めた。



ハルが上位魔法である、時空移動を使えるようになったのだ。

その時から、彼らが成長するにつれ2人の間には確かな差が生まれていた。



『ハルちゃんはさすがね。』
『有名な魔法使いの子にふさわしい。』
『将来が楽しみだわ。』

彼らの元を訪れる者は、ハルを見る度褒めたたえた。

しかし、光が強ければ陰も強くなる。


『どうして兄の方は魔法が使えないのかしら。』
『未だ何の魔法も使えないなんて、どういう事だ?』
『本当に、落ちこぼれね』


直接言われたことは無かったが、背後で聞こえるその言葉は確かに幼いシグの心に深く刺さっていった。


どれだけ努力しても、魔法の力は目覚めない。
それどころか、日が過ぎていく程皆が離れていく。


しかし、当時の彼はとても前向きで、決して人前で涙を流すことはしなかった。



もっと頑張ればいい。
頑張れば誰かが褒めてくれる。
魔法も使えるようになるはずなんだ。


彼は努力を続け、何度転んでも立ち上がった。


そんな彼を、ある日







天は見捨てたのだ。

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作者名:まかろ&凛音 | 作成日時:2015年3月7日 13時

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