おんな将軍誕生 ページ7
母の死からもはや十一年、将軍・家昌は四十五歳、A姫は十一歳になっていた。
この十一年の間、家昌は幕臣たちになんどもなんども後妻か側室をめとるよう勧められたが頑として首を縦に振らなかった。
将軍継嗣(けいし)の問題はさらに複雑になっていった。
将軍家の親類として御三家の尾張、紀州、水戸の三つと、御三卿と呼ばれる田安、清水、一橋の三つと、全国に数個ある松平家がある。
中でも御三家の水戸と紀州が将軍継嗣をめぐって激しい対立を繰り広げていた。
激しい対立は家昌の頭を悩ませ、心を苦しめた。日に日に疲れていく家昌。元々丈夫とはいえぬその体に激務は耐えられぬものとなっていった。
だが、家昌はある日、前々から考えていた妙案をついに幕臣たちを集め、皆の前で言った。
家昌「次期将軍は.....Aにしようと思う。」
幕臣たち「!!!!!」
幕臣たちは驚きを隠せない。それもそのはずだ。今までのこの幕府は何事も『前例』を重視し、大切にしてきたのだ。
幕臣1「お、恐れながら申し上げます。姫様を将軍にするというのは前例のないことですし.....」
幕臣2「し、しかも御歳十一歳のお方に.....」
家昌「幼齢の将軍は過去にも例がある。私は将軍継嗣の激しい争いを終わらせたい。」
怪訝な空気になる。だが、それを打ち破ったのはある幕臣の一言だった。
保科正之「私は姫様が将軍になるべきだと思います。」
柳沢吉保「私もおなじ思いです。」
大岡忠相「あのご聡明であらせられる姫様ならなおさら!」
阿部正弘「その通りです!」
『おんな将軍』という前代未問の提案に真っ先に賛成したのは保科と柳沢と大岡と阿部のおんなの幕臣たちだった。皆、有能で家昌がおんな将軍の布石としても抱えていた幕臣たちである。
家昌「皆、これからはAを私と思って崇めるように!」
幕臣たち「ははっー!」
幕臣たちは家昌の大号令に平伏した。
それからまもなく家昌は亡くなった。
享年四十五歳。
そして将軍の座には僅か十一歳のA姫がついた。
史上類を見ない、初のおんな将軍の誕生である。
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牡丹(プロフ) - そぐむさん» ありがとうございます。とても嬉しいです。小説の方もご愛読ありがとうございます。これからも更新いたしますので何卒よろしくお願いいたします。 (2018年11月15日 17時) (レス) id: 008b18c312 (このIDを非表示/違反報告)
そぐむ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています!合格おめでとうございます!! (2018年11月15日 14時) (レス) id: 3753eef71c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牡丹 | 作成日時:2018年10月22日 22時