おんな将軍記~姫君~ ページ4
あれから月満ちてついに愛子女王は出産した。
家昌が産まれた赤子と愛子女王に対面したのはその日の夜だった。
家昌「よくやったぞ!愛子!ありがとう。ありがとう。」
今はこの部屋には家昌と愛子女王と赤子の三人きりである。故に家昌は人目を憚らず、涙ぐんだ。
だが、愛子女王の表情は険しい。元々からだの弱かった彼女に出産なる大行事は、からだに多大な負担をかけただろう。家昌は褥に仰向けに横たわる愛子女王の額を労りの気持ちを込めてやさしくなでた。
愛子女王「上様.....上様.....その子は.....姫ですよ.....?皆.....跡取りの男子を期待していたのに.....」
愛子女王の懐妊がわかったとき幕臣たちをはじめ皆、男子を期待した。愛子女王もそのことはよく知っていた。「子ができぬ。」徳川に嫁いで約十数年間、誰よりもそのことを悩んできたのは愛子女王自身だったからだ。
家昌「だから、どうした?」
家昌は言った。
愛子女王「.....え?」
家昌「私は別に姫だろうと若だろうと、どちらでもよかった。私にとっても御台にとっても最初の子であろう?ありがとう御台。ありがとう。」
愛子女王「上様.....上様!」
愛子女王は涙を流した。
家昌は姫でも若でもこだわりはなかった。
ただ愛子女王も産まれてくる赤子も元気であればよかった。
愛子女王との子供が出来て家昌はどれほど嬉しかっただろうか。
「ありがとう。」この言葉に愛子女王はどれほど救われただろうか。
まわりがなんと言おうがふたりは幸せだったのだ。
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牡丹(プロフ) - そぐむさん» ありがとうございます。とても嬉しいです。小説の方もご愛読ありがとうございます。これからも更新いたしますので何卒よろしくお願いいたします。 (2018年11月15日 17時) (レス) id: 008b18c312 (このIDを非表示/違反報告)
そぐむ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています!合格おめでとうございます!! (2018年11月15日 14時) (レス) id: 3753eef71c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牡丹 | 作成日時:2018年10月22日 22時