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誰にも教えたくない俺とヌナの1日だけの冒険を思い出しながら宿舎に帰ると、ヒョンジナが迎えてくれた。
リビングの灯りが漏れていてるけど、ヒョン達の声は聞こえない。
「あれ、今帰ってきたの」
「ん、皆まだ起きてるの?」
「俺だけだよ。…酒飲んだ?」
「臭う?飲んでないけど服に臭い付いたかな」
「ヒョンにバレたら面倒臭いよ。早く風呂入ってきな」
「うん、ありがと」
数年前まではグループの中で1番仲が悪かったのが考えられないくらい今では仲良しなヒョンジン。
宿舎も一緒で歳も近いから何かと頼れる存在になった。
シャワーを済ませてリビングに行くと、彼はテレビを付けてソファに寝転んでいた。
俺に気付いた彼は何だかニヤニヤしながら手招きをする。
「何だよ、ニヤニヤして」
「いやお前に言われたくないよ」
「いつ俺がニヤニヤしたの?」
「ここ数週間ずっとだよ。さては音楽番組の収録の日に好きな子できた?」
「はい?」
「違うの?」
「違うよ!今は恋愛とかする暇無いって。
そもそも恋愛禁止だろ?」
「今はそうだけど、何年かしたら恋愛禁止期間は終わるじゃん。それに想うだけなら自由だと思うけど」
俺が恋してる前提で話を進めるヒョンジニは楽しくて仕方がないとでも言うように口数が多くなる。
テレビの音量が気になったのか、彼はいつの間にか持っていたリモコンでテレビを消した。
「そうだとしても、同業者じゃないよ」
「え…!まじで恋してるの?」
一層盛り上がってきたヒョンジニはパッとその目を大きく開いて、口元を手で隠す。
ヒョンが起きてしまうのではと不安な俺はキョロキョロと部屋を一瞥してからもう一度ヒョンジンと向き合った。
「恋とかそんな風に言えるものじゃないよ。
子供の時からずっと大切な人なんだ」
「子供の時からずっと?随分長いね?」
「だから今はまだ秘密にしておきたい」
「わぁ、それは…そうだね。
わかったよ。聞いたからには俺も協力する」
ヒョン達には内緒の、俺とヒョンジンだけの夜会は朝が来る前にお開きになった。
誰かにヌナのことを話したのは初めてだったけど、その相手がヒョンジンで良かったかもしれない。
ともかく、これからは顔に出ないように気をつけないと。
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作者名:ばみ x他1人 | 作成日時:2023年10月25日 5時