[22]ヒョンの鋭い目 ページ35
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思わず目を見開いた。
昨日の生放送に関するステイの反応を流し見していたら、ハニがピアニストの人を見ている気がするとのコメントが目に入って、小さく「えっ」と声が漏れてしまう。
俺をよく例える時に使われるリスの絵文字が使われていたから、余計に目に入りやすかったんだ。
昨日の生放送で話題になるくらいのピアニストと言えばヌナしかいない。
このたった数秒、もしかしたら一瞬かもしれない。手汗が滲み出るのと同時に心臓がどんどんうるさくなっていく。
もし一部の過激な人がヌナを攻撃してしまったら。
俺のこの気持ちに気付かれて、ヌナのもとへ情報が先回りしてしまったら。
気をつけていたはずなのに、無意識にヌナを目で追ってしまっていたんだ。見つめるのはヌナがステージに上がった時だけにしようと思っていたのに。
少し画面をスクロールすると“気の所為だよ”のコメントが何件かついていた。ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、1人だと思っていた俺の右肩にポンと誰かの手が乗った。
「ぅわっっ!」
「何でそんなにびっくりするの」
「リノヒョン…声くらいかけてよ」
「何回も名前呼んだけどお前が反応しなかったんだよ」
「ご、ごめん」
「やましい事でもあるの?」
「そんなの無いよ!」
「昨日の楽屋での事忘れたとは言わせないよ」
昨日の楽屋での事。多分というか絶対ヌナの事だ。
ヒョンジニにヌナの目撃情報を聞いて、後で説明するとヒョンに伝えて楽屋を飛び出した時の事だろう。
確かに今の今までヒョンに言われるまで忘れていた。
「そんな大した事でも無くて…、
ただ俺の幼馴染も昨日の生放送に出てたんだ」
「幼馴染いたの?」
「いくら俺でも幼馴染くらいいるよ」
「へぇ。アイドルなの?」
「そ、そんなに気になるの?アイドルじゃないけど」
「だって初耳だったし。楽屋を出て行った時のハニの顔やけに嬉しそうだったから」
またしても鋭い観察眼を持った能力者が1人…。
というか俺そんなに顔に出ちゃってるの?ヌナが帰国した時もヒョンジニからニヤけてると言われて、その時から結構気をつけてるつもりなのに。
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作者名:ばみ x他1人 | 作成日時:2023年10月25日 5時