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今日の生放送は、私個人のコンサートや大きなコンクールよりも別の意味でとても緊張した。私を知らない人が沢山見ていて、尚且つ出演者の半分以上がアイドルだということもあり観客の人達も殆どがアイドルのファンなんだろう。
そんな人達に見られながら人気アイドルとのコラボ出演には到底心臓が持ちそうになかった。
それでも曲が終われば私の心臓の音を掻き消すような沢山の拍手と歓声が飛び交って、難なく終えることが出来た。
次の出演者がステージに立ち、私と___さんは用意された席へと着く。
落ち着かずにソワソワしていると、___さんが「事務所の後輩がいる」と言って挨拶をしに向かって行った。目をやるとジソン達のグループが___さんと親しげに話しており、その中でジソンイも握手やらハグやらして楽しそうに話している。
昔は想像も出来なかった目の前に広がるこの光景。
もしタイムスリップして当時のジソンイにこの事を話しても、きっと信じるどころか怖気付いてしまうだろうな。
私たちの後の出演者も何組か終わった頃にようやく彼らの名前が呼ばれ、ジソンイは緊張をしているのか手に息を吹きながらステージへ向かっていく。
「がんばれ、ジソンア」
自分にしか聞こえないくらいの声量で放った言葉はジソンイに聞こえる筈もないけれど、この気持ちだけでも届けばいいな。
以前ジソンイに推されてテレビで見た時の様に、普段のドジな彼とは似ても似つかない表情やダンスで圧倒的なパフォーマンスを見せた。
頭から離れないメロディーに、インパクトのある独特な振り付けのこの曲はかなりヒットしたらしく、国外でも大人気だと言う。
まさかあの時アイドル事務所に合格したと嬉しそうに報告してきた男の子が、もうこんなに大人気アイドルになってしまうなんて。親の様な気持ちでジソンイを見てしまい、何だか私ってオバサンみたいとすら思う。
無事生放送が終わり、帰る支度をしているとスマホの通知が鳴った。
〈どうだった?〉
〈緊張したけど楽しかったよ。アイドルなジソンイも生で見れたしね〉
〈ヌナからの視線感じた〉
〈そんなに見てない〉
〈見てよ!!〉
〈冗談だって。かっこよかったよ〉
〈ヌナもすごく綺麗だったよ。会場の全員が見惚れてたね〉
〈冗談いいって〉
〈冗談じゃないのに〉
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作者名:ばみ x他1人 | 作成日時:2023年10月25日 5時