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あの時のヌナのボロボロになった手を思い出して自分の拳を握りしめる。
またあの時の様にヌナが傷付いてしまったら。
最近情けなくなるくらい空回りした事も思い出して余計に心配が募ってしまう。
「元気無いじゃん、眠いの？」
「そんな事ないよ」
そんな不安を抱えたままとうとう出演する生放送が始まる1時間前になってしまった。
楽屋でリノヒョンに心配されたけど明らかに元気無い人が返すテンプレートの言葉を使ってしまい、更にヒョンの顔が険しくなった。
「本当に何も無いよ、大丈夫」
「ふうん？」
ヒョンの鋭い視線に耐えられず目を逸らすと、トイレから帰ってきたヒョンジニに名前を呼ばれた。
やたらと明るい声色に思わずヒョンもヒョンジニの方を向く。
「ハナ、すぐ近くにユキさんいたよ！」
「ヌナが？ど、どこ！？」
「出て左行った所で見たよ」
今朝、メッセージを送ってみたけど返事が来なかった。
きっと単に忙しいからだと思うけど、それでも心配が募るには十分だった。
隣にいたリノヒョンは何が何だかと言ったような顔で俺とヒョンジナを見ていたけど、後で説明するからと言って俺は楽屋を出た。
クリスマスの特番という事もあってそこそこ大きなこの生放送には、沢山のアーティストが集まる。当然楽屋付近もスタッフや出演者でごった返していて、なかなか前へ進めない。
「あ、ヌ」
「あっ！ハンさん！」
ヌナの後ろ姿を見つけて声を掛けようとした時、ヌナと呼ぶ前に別の誰かに遮られた。しかも聞き間違えじゃなければ俺の名前を呼んでいた。
「…？」
「あの、ご挨拶をしたくて…」
振り返ると見覚えの無い女性が1人で俺を見上げている。姿を見るにきっとどこかの事務所のアイドルだ。挨拶とは言うけれど、その挨拶を待てど彼女からその言葉は出てこなくて、その間にヌナが何処かへ行ってしまったらどうしようと焦燥感に駆られた俺は自分から挨拶する事にした。
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作者名：ばみ x他1人 | 作成日時：2023年10月25日 5時
