頬に星屑を詰め込んで (ページ28)

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今日は夜まで仕事があったからスマホをゆっくり見る暇が無くて、結局寝る前になってベッドの中でスマホを開いた。

SNSをチェックしようとしたらトレンドにヌナの名前と＿＿先輩が入っているのに気付く。

「…あ！今日クリスマスイブじゃん！」

忙しくてすっかり忘れていたけど今日はクリスマスイブだ。ヌナと＿＿先輩のコラボ曲が解禁される日だった。

急いで動画アプリを開くと、俺の目に飛び込んできたのは見た事無いヌナと＿＿先輩が写るサムネイル。
これが今日公開されたMV…。どうやらおすすめ一覧の1番上に出て来てくれたらしい。

ヌナの華奢な手がピアノの鍵盤に置かれて、曲が始まった。

長年ピアノを弾き続けているヌナの指は細長く、爪先のキラキラしたネイルが良く映える。

しんと静まった外に最初の一音が儚く響いた後に＿＿先輩の慎重な声が入っていく。

「わぁ……、」

クリスマスイブに聞く曲には悲しい歌詞を、包むみたいに優しく音を繋ぐピアノ。
＿＿先輩の低くて丁寧な声がピアノの音と合わさって、凄く心地がいい。

勿論動画に写るのは半分以上が＿＿先輩で、彼がヌナとアイコンタクトを取る度にヌナが写る程度だったけど、普段キリッとしてるヌナが楽しそうな表情を浮かべるのを見ると口元が緩んでしまう。

ヌナ、こんなに素敵な曲を作ってたんだね。

いつかの自分と重なるその歌詞が苦しくて、でもヌナのピアノの音で慰められてる様な気分になって遂に涙が溢れた。

『溶けていく雪が儚いと思うのも

冬の夜空の星をもっと見たいと願うのも

全部君のおかげだった』

ヌナのピアノが聞こえるからかな、俺の記憶の中にいるヌナをたくさん思い出した。

クラスでどんなに馴染めなくても学校に行けたのは、
今でも大好きな特別な音楽と出会えたのは、
家にいるのが退屈だと思うようになったのは、

全部ヌナがいてくれたからだった。

動画を見終わってすぐにヌナに電話をかけた。

仕事で疲れて眠いとか、号泣して鼻声だとかそんなのはどうでもよくて、とにかく今はヌナに電話をかけないとって思ったんだ。