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思わず触れたくなってしまうような髪の毛を揺らして去っていくユキさんを、姿が見えなくなるまで見つめていた。
スンミニが見せてきた写真も綺麗だったけど、実際のユキさんの方が何倍も綺麗だなんて。
ハニが「ヌナ」って呼んでいたから歳上なんだろうけど、華奢で柔らかい声に儚い雰囲気を纏うユキさんは傍で見守っていたくなるような、手を繋ぎたくなるようなそんな女性だった。
確かに優しそうではあるけど何て言うかすぐ何処かに行ってしまいそうで、ハニがあんなに焦っていたのも何となくわかる気がする。
「ハニとユキさんが仲良かったとは。何で知り合ったの?」
「…ヌナとは幼馴染だよ」
「マジ!?だからあんなに落ち着いてハニと話してたんだ」
今年1ビックリしたかもしれない。
世間って意外と狭いんだなぁ、って今まで生きてきた中で1番に思った。
「はぁ、家族以外の誰かに言ったの初めて」
「何で言わないの?」
「そりゃあ…、ヌナを巻き込みたくないし」
声が小さくなっていくのと比例するように表情に陰ができるハニは何だか寂しそうだった。
アイドルという立場にある以上、無闇に異性との関係を明かすものではない。ましてや相手はピアニストとして名の知れている人で、特定しにくい一般人ではないなら尚更のこと。
それでもメンバーにすら言わないという事は、余程ユキさんのことを大事に思ってるんだろう。
「そっか…。そうだよね」
「よし、帰ろっか」
すっかりハニの充電器を取りに行くのを忘れていて、宿舎に帰ってから2人して思い出した。
仕方なくその日は俺のモバイルバッテリーを貸してあげた。
「ヒョンジナ、ハニ少しは元気になったみたいだけど何したんだ?」
「えっ?あぁ、んー、俺は何もしてないですよ」
「ふぅん?」
ビニヒョンが言う通りハニは元気になったけど、でもまだ本調子ではない様に思う。
ユキさんとの喧嘩以外にも何か事情があるのかも。
聞き出したいけど、きっと何かあればハニは自分から話すだろうからその日を待っていよう。
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作者名:ばみ x他1人 | 作成日時:2023年10月25日 5時