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「それで、__先輩とはどんな感じなの?」
「何その恋バナみたいな聞き方」
「恋バナなんて可愛いもんじゃないよ!
アプローチされたりしてないよね?」
「ジソンアったら何を言い出すのかと思えば…
相手はアイドルだよ?私なんか比べ物にならないくらい可愛い子が周りに沢山いるのに何で私にアプローチするの?」
「だってヌナが…!」
「私が何?」
誰よりも綺麗だから。その言葉を飲み込んでヌナから目線を逸らした。
綺麗だし自立していて、優しくて強がりで少しマイペースなところも全部魅力的だから。
相手がアイドルだろうが一般人だろうが関係ないんだよ。
「なによ?」
「…何でもない」
「わざわざ私の家まで来てそんな事聞きに来たの?」
「違うって」
「何が違うの?」
何で俺ヌナの家で苛立ってるんだろう。
ヌナもいつもなら適当に流してくれるのに、何だか今日はいつものヌナじゃないみたい。
俺、ヌナにそんな顔させたくて来た訳じゃないのに、
違うのに…、
「私の仕事に不満がある?」
「そんなこと言ってない!」
「じゃあ何なの…?」
「そんな事言いたいんじゃなくて…、
ヌナに傷ついてほしくないだけなんだ、」
「傷つく?私が?」
「…ごめん、余計なお世話だったかも。
もう帰るね」
ただピアノを聞きに来ただけじゃない。
SNSでは色んな意見があって、それを簡単に見ることができちゃうから。
当人達にその気が無くても、悪意ある切り取り方をされて、フェイクなのにまるで本当の映像の様に晒されてしまうから。
少しでも近い距離で居たら、少しでも親しげに話してたら。その相手が人気アイドルなら尚更誰かの反感を買う可能性があるから気を付けてほしいんだって、伝えたかったんだ。
10年前の何も出来なかった俺とは違うから、だから今日はヌナの隣にいたかっただけなんだ。
心配して余計な事まで口を出しちゃったのは俺の悪い癖だし、勿論私情も入ってた。完全に俺のエゴだ。
ヌナにはヌナの考えがあってピアノと向き合っていたのに、全部空回りして結果的にヌナを怒らせて悲しませた。
10年前の自分より最低だったかもしれない。
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作者名:ばみ x他1人 | 作成日時:2023年10月25日 5時