頬に星屑を詰め込んで (ページ16)

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土砂降りの中でもコンサートの会場は満員になる程、当時高校生だったヌナはピアニストとして活躍していた。

天気とは裏腹に俺はヌナのピアノが聴けるんだとはしゃいでいて、ヌナも高校生ながらにプレッシャーに負けまいと張り切っていたのを覚えている。

コンサートが開演する10分前のこと。
スタッフの数人がバタバタと騒がしくなったことに気付いて、舞台裏に回ってヌナを探すと床に座り込んだヌナと、それを囲う大人達。

「ヌナ？…どうしたの」

「ぁ、ジソンア…、」

メイクをしていてもわかるくらい真っ青な顔をして震えているのを見て尋常ではない空気を感じた。

放心状態のヌナからはちゃんと言葉を聞き取れなくて、抱きしめながら周りのスタッフの声に耳を傾ける。

＿＿＿＿ユキさんのご両親が〜〜病院に搬送されて……

タクシーで会場に向かう途中に大きな事故に巻き込まれたヌナのご両親はすぐに大きな病院に搬送されて、そのコンサートは急遽中止になった。

勿論記者やテレビ局もコンサートに来ていてすぐに全国に報道されることになる。

病院の待合室でヌナの手を握り締めながら、息を忘れるくらい必死にご両親の無事を願っていたのに知らされたのは残酷な現実だった。

お父さんは骨折で済んだけど、お母さんは即死だったと。

数日後のお葬式でただ立ちすくむヌナの顔が未だに忘れられずにいる。

それでも俺の前では強がっていたヌナを見て、俺は自分の無力さを思い知ったんだ。

まだ慌ただしい日の中、しかもまだ高校生のヌナに容赦なくインタビューを迫るマスメディアが憎くて仕方なかったけど、ヌナは窶れた顔をしながらも必死に応えていた。

それまでも何度かテレビには出ていたからこういうのは仕方ないよ、と諦めていたヌナの背中を見守るしか出来なかった自分が1番憎かったよ。

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「ヌナ、あの」

『今日は雨が降ってるから気を付けるんだよ』

「ヌナ……もう少し待っててくれる？」

『なにを？』

「俺、デビューはしたけどまだ全然だから…、もう少し自分に納得出来たらヌナを…俺たちのコンサートに招待したいんだ」

『…ありがとう。楽しみにしてるから』

それから少しの間最近あった事の話をして電話を切った。

この日に雨が降ったのは数年ぶりで、ヌナと電話をしたのも随分久しぶりだった。