頬に星屑を詰め込んで (ページ15)

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［１０］雨ページ15

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ヌナは今何してるんだろう。

最近肌寒くなってきて、生憎今日は朝から雨が止まない。
重そうに見える黒い雲が街を覆っていて、今月に入ってからは1番気温が低い日だとニュースで聞いた。

10年前の今日もこんな雨だった。

今日は忘れもしない、ヌナのお母さんの命日。

ヌナは何年か前にもう立ち直ったと言っていたけど、俺には想像も出来ないくらい辛いはずなんだ。

〈ヌナ、今電話していい？〉

〈どうしたの急に〉

メッセージを送ってから数分後、意外にも早く返信が来た。

〈なんとなく〉

〈気遣ってるの？もう10年も経つんだよ〉

〈違うよ、ヌナの声が聞きたい〉

間も無くスマホにはヌナから電話がかかってきて、突然の着信音にびっくりしつつも応答ボタンをタップした。

『もしもし？』

「もしもしヌナ。…急にごめん」

『いいよ。今日は休みなの？』

「今は一旦宿舎に帰ってきてて夜からまた仕事」

電話越しに聞こえるヌナの声が少し掠れて聞こえるのは気のせいじゃない、と思う。

とにかくヌナの声が聞きたかっただけだから特に話題も考えていなくて少しの沈黙が流れてしまう。

『ジソンア、何も悩んでない？』

「大丈夫だよ」

『ジソンにはずっと笑っててほしいよ』

「…うん、ヌナもだよ。ヌナも、ずっと笑っててよ、」

どうしよう、俺がヌナに同じ事を言わなきゃなのに。
何も気が利いた事を言えなくて、終いにはヌナにそんな事を言わせてしまっている。

ヌナの震えたその言葉は自分に言い聞かせてるのだろうか。
何で俺も泣きそうになってるの。

こうして理由も無くヌナの声が聞きたいと言って電話する時、ヌナは俺がほしい言葉をくれる。

でも今は違うんだ、俺が、俺が言わなきゃなのに。