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22時を過ぎる頃。
楽曲の作業を1秒でも早く終わらせたい俺はろくに休憩も取らずパソコンと睨めっこしていた。
いつもならこの時間が1番心地良いはずなのに、今日は訳が違う。
最後の確認が終わったら忘れずにファイルを保存して、散らかった作業部屋はチャニヒョンに小言を言われるから少しだけ片付けた。と言ってもゴミを捨てただけなんだけど。
エレベーターなんか待ってられない、階段を駆け降りて会社を出て2週間前に自分が予約した店へと足を走らせる。
ヌナが帰国した日の音楽番組の収録が終わった後、ヌナからご飯のお誘いが来た。普段なら彼氏いるくせになんて思うだろうけど、それよりも今は誘われた事が嬉しくてそんな事どうでもよかった。
〈ジソンイが好きそうなお土産あるから〉
胸が弾むってこういう事なの?って思うくらいドキドキしているし足取りは軽い。
でも、ちょっと待って。
結婚報告とかじゃないよね?
いやいやいやいや、流石にないよね?
1度思考を傾けたら最後、さっきまで楽しみで仕方なかったのに胃が痛くなってきた。
歩みも自然と止まる。
なんなら彼氏も同席だったら?
2年前にヌナがドイツに旅立った時以上に泣くかもしれない。
〈ねぇ、ヌナ
今店に向かってるけど今日は2人きりだよね?〉
〈勿論、私とジソンに同席する人なんて居ないよ。
早く来て〜〉
俺が中学生の時、待ち合わせしてたカフェに初めて出来た彼氏を連れてきた事を忘れたとは言わせないよ。
絶対あの時目開き過ぎたのが原因でドライアイになったに違いないもん。
ヌナの確認を取ったにもかかわらず、俺は不安を抱えたままお店の戸を開けた。
「あ、やっと来た」
「久しぶり…、ヌナ」
「久しぶり、ジソンア」
案内された個室に入ると、既にお酒を飲んでいるヌナが本当に1人で俺を迎えた。
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作者名:ばみ x他1人 | 作成日時:2023年10月25日 5時