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「似ていて」 ページ8

……それよりも。

ふわりと香ったあの優しい匂い、やっぱりどこかで嗅いだような気がしてならない。

でも、彼には一度も会ったことがない。だから私が彼の匂いを知っていることなどありえないのだ。

ぅああ!もうよくわからなくなってきた……

それにしても、彼は私を助けたあと逃げるように帰ってしまった。お礼、したかったんだけどな。




*☼*―――――*☼*―――――



待ち侘びた日が来た。

予告日である。今回はとある美術館のこれまた美しい宝石を盗むとか。

私は夜中起きる為に早めに寝床についた。あぁ、私は今遠足前の小学生みたいな気分だ。寝れなかったら、どうしよう。



控えめな目覚ましとノック音で目を覚ました。月光の光に人影がぽつり。あぁ、寝坊してしまった!

「はい」

急いでベッドから降り、カーテンと出窓を開ける。彼はいつもと変わらぬ微笑みを向けてきた。

「こんばんは、今日はもうお休みになられたのかと思いましたよ。」

「1週間も待ったんですから楽しみで仮眠取るの遅くなっちゃったんですよ」

「遠足前の小学生みたいですね」

クスクスと上品に笑う相手に少し苛立ちながら「やめてくださいよ」と言う。

こほん、と一つ咳払いしてまたお話をする。今まで起こったこと、それに対する素直な気持ち。飾らない気持ちを誰かにぶつけるのは心のつっかはかりがすうっと抜けるみたいで気持ちがいい。

「___で、私この前信号無視しそうになっちゃって……その時男子高校生に助けて貰ったんですよ!凄く怖かったんです……その人に助けてもらえてよかった。」

ぴり、とその場の空気が変わった。びっくりして相手の顔色を窺うと、彼はいつもと変わらぬ笑顔を貼り付けていた。

「あの……」

「お名前は」

言葉を遮られる。

「え?」

「その人のお名前、伺ったんですか?」

「あっ!聞いてませんでした……」

そう言うと、ふっと場の空気がまた和らいだ。何なんだろう。

夜風が吹き込んできた。ふんわりと優しい香りが鼻腔をくすぐる。

( ______……あ。 )

つい最近嗅いだ匂いだ。

あの、高校生の……。

……でも可笑しい。この人は中森警部に追われて何十年か経ってるはずだ。

そうなれば彼のこの幼い姿は私が警戒しないようにと気を使ってくれたのか。つくづく優しい人だと思う。

「まるで貴方みたいに優しい人でした。口調は荒かったですけど。」

『理由』→←「救助」



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乃花おむ子(プロフ) - 白。さん» ありがとうございます!これからも気が向いた時にちまちま続編というか、後日談の「Secret Lover」更新していきますのでよろしくお願いします!レス返すの遅くなってしまいすみませんでした〜! (2020年2月19日 19時) (レス) id: 6c075283b8 (このIDを非表示/違反報告)
白。 - コナン知ってて、まじ快知ってて、あんスタまで知ってるとは…。作者さんとはお友達になれそうです!偶然見つけた作品なのですが、良いのに当たりました。他の作品も楽しみにしてますね。ささやかに応援します。 (2019年5月7日 20時) (レス) id: 0235a92526 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乃花おむ子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Omutarosan1/  
作成日時:2019年4月13日 20時

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