〈完〉本能の領域

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「ユンギさんっ、お待たせしました、」
「...急いでないから走るなよ」






日曜日、ユンギさんの休みに合わせて二人で出掛けようと進めていた話の通り、今日はユンギさんと映画を観ようと予定を立てていた。
待ち合わせ場所には既にシンプルなTシャツとダメージジーンズという思いの外カジュアルな姿でユンギさんが待っていた。

休日のユンギさんってあんな感じなのか、とついつい自分の服も確認。
変じゃないよね？大丈夫、なんて心で自問自答して気付いたら待ち合わせ5分前になってて慌てて彼の元へ小走りで向かった。






まだ時間あるから適当にビルん中入っとくか、心底太陽を嫌そうにしているユンギさんにくすくす笑っているとなんだよ、と視線が私に向く。じろりと見下ろされ、ユンギさんだなぁと思って、なんて気の抜けた返事をすればはぁ？と首を傾げるユンギさん。ユンギさんの言葉は刺があるのに痛くない感じ。根が優しい人だからかな。

小さい溜息の後A、そう優しく呼ばれた自分の名前に顔を上げると行くぞと何の用意もしていない状態の私の手を取ってユンギさんは進み始めた。






慌ててユンギさん、と声を掛けるとなに？と振り返る彼に、もしかして全然気にしていない？なんて不安のようなものが渦巻く。
手、と呟いて視線を下げると彼も気付いたように視線を下げて、それから嫌？と首を傾げた。






「...ジミンみたいですよ、ユンギさん」
「あそこまであざとくねぇよ」






からりと笑ったユンギさんの男らしい手が優しく私の手を包み込む。触れ合ったそこから熱を帯びて、繋がれた手も、ユンギさんの顔も見れなくて、揺れるスカートの裾を視線だけで追っていた。






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