# 外 ページ9
/
生ぬるく、丁度良い風が吹くヨコハマ。
人がすれ違う街を、男女二人は足音を小さく鳴らし歩いていた。
｢却説、先ず何処から行こうか｣
太宰が話を持ち出す。
其れに応える様にAが口開く。
｢えっと、何処から…と云いますと…｣
｢君の服や物を買わないといけない｣
｢い、いえ、そんな…！お財布…｣
｢私が全て払う｣
｢駄目です！！｣
何があっても太宰の前で大きな声を出さなかったAだが、今回は相当焦っているのか声を張る。
そんなAを見て太宰は満足気に微笑む。
｢だーめ。私が払う｣
｢否、駄目です！ATMでお金下ろしても…ぁ…｣
云い掛けた言葉をぎゅっと仕舞い込む。
お出掛け中にATMでお金を下ろす、という行動を嫌う。
若し、太宰もそうだったらどうしよう。
本能的にそう思ったのか自身の服の袖を強く握り、唇を紡ぐ。
｢私は今、君に物を買い与えたいのだよ。｣
｢…｣
｢…Aさん？｣
｢あっ、は、はい！｣
Aの少し暗くなった表情、そして袖を握る手を見て太宰は察するだろう。
そして、寂しそうに微笑む。
｢…Aさん、手出して？｣
｢は、はい、？｣
云われた通りに手を差し出すA。
差し出されたその手を、優しく握る。
Aはその行動に戸惑い首を傾げた。
手はゆっくりと下がり、太宰はAを見てにこりと笑う。
｢さあ、先ずは服を買いに行こう｣
｢ええ！？｣
突然歩き出した太宰に引っ張られるように、Aは着いて行き、戸惑いを隠せない儘、手を握り返した。
だが、その顔には自然と笑みが浮かんでいた。
/
日も落ち、夜になったヨコハマ。
レストランから見える外の景色を太宰は見詰めた。
時々、窓に映る店員や客の姿を見ては、誰かを探すように一人一人の顔を見てゆく。
すると、窓にお腹を抑えたAが映った。
ので、太宰は窓からAへと視線を移す。
｢お腹は大丈夫かい？｣
｢本当にすみません、大丈夫です｣
頭を軽く下げながら、机一つを挟んだ太宰の向かい側の席に座るA。
そして、窓の外に目を向けては、綺麗、と呟く。
そんな彼女を見ては、微笑む太宰だが、違和感を一つ感じていた。
｢…｣
今日、色々な処に行って色々な物を買ったが、何処に行っても必ず後ろからの気配が消えなかった。
すれ違う事もあれば、人並みも多いためおかしいことでは無いが、
｢執着、か｣
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 447人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
gross - 面白いです… (1月8日 10時) (
レス) @page37 id: 52a16cf4dd (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 面白すぎる！続きが楽しみです！ (5月29日 2時) (レス) @page36 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 面白いです！続き楽しみにしてます！！ (2023年4月16日 17時) (レス) @page18 id: 71114ebb82 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 太宰さんナイスです！続きすごく気になります！頑張ってください！ (2023年4月14日 23時) (レス) @page15 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
シュークリーム - すごく素敵なお話だと思います！続き待ってます！ (2023年4月12日 16時) (レス) @page6 id: ece26d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おりがみ | 作成日時：2023年4月11日 14時
