# 傾 ページ36
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「Aさん、食べれるかい？」
家に帰る途中のコンビニで買った温めて食べるお弁当。
そのお弁当を一口も食べていないAさんを見て胸がざわつく。
食べれるか、と問いても彼女の耳にはその言葉が届いていないのだろうと手に取るように解る。
暗い顔で斜め下をじっと見詰めた儘動かない。瞬きもしない。
手を差し伸べてみるも、何も反応しないのでそのまま頭に触れた。
「！！は、はいっ、どうされましたか、？」
驚いてこちらに顔を向けてくる。
その顔は苦しそうで、私まで苦しくなる。
相手の感情と自分の感情が共有されるなんて、今迄なかったが。
「…ご飯、食べれないのかい？」
「っぁ…い、いえ、食べれます」
「……そっか」
手をするりと離して、じっと見詰める。
焦って弁当を口にするAさんだが、その顔には焦り以外の感情は載っておらず、味がしないのだと解った。
「…美味しい？」
「…はい、美味しいですよ」
ここまで一緒に暮らして、解った事がある。
Aさんは、嘘が下手だ。
「本当に？」
「………少し、味が薄く感じます」
「少しだけ？」
「…い、否…味が…あまり…」
少しずつ少しずつ、本当の事を云ってゆくAさんを見て、呆れ等ではなく、他のよく解らない感情が湧き出て、自然と笑ってしまう。
笑った私を見て、恥ずかしそうに右手で顔を隠している。
「うふふ、嘘ついたね」
「…っ、ご、ごめんなさい」
「謝って欲しくは無いよ。ただ、可愛くて」
「か、かわ…か…………」
口を開けた儘、固まる姿が愛おしく感じて、目を細める。
無言で顔を赤くしながら、またご飯を口にするが、器官に入ったようで、口を抑えながら噎せる。
「嗚呼…水を持ってくるね」
「げほっ…い、いえッ私がぁ」
水を持ってこようと立ち上がるがそれと同時に、Aさんが机に手を着いて立ち上がろうと力を入れる。
「う゛ッ！？」
その瞬間、机が傾き、Aさんに直撃した。
「大丈夫かい！？」
下敷きにはなっていないが、服にお弁当の中身が落ちてしまったようだ。
熱そうに顔を歪めて、背中を丸める。
「大丈夫、です、すみません」
「謝らなくていいよ」
シャワー浴びておいで、と一言云えば申し訳なさそうに頭を下げて、私の視界から抜ける。
「あれ、…可笑しいな」
私、今
すごく焦ってる
*
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gross - 面白いです… (1月8日 10時) (
レス) @page37 id: 52a16cf4dd (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 面白すぎる！続きが楽しみです！ (5月29日 2時) (レス) @page36 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 面白いです！続き楽しみにしてます！！ (2023年4月16日 17時) (レス) @page18 id: 71114ebb82 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 太宰さんナイスです！続きすごく気になります！頑張ってください！ (2023年4月14日 23時) (レス) @page15 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
シュークリーム - すごく素敵なお話だと思います！続き待ってます！ (2023年4月12日 16時) (レス) @page6 id: ece26d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おりがみ | 作成日時：2023年4月11日 14時
