# 魔 ページ31
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「美味しいかい?」
出前で届いた晩御飯を食べていると、太宰がそう問うた。
太宰が問うたのには、確りとした理由があり。Aの皿を見れば、その理由は一目瞭然だった。
「はい、美味しいです」
「じゃあ、食欲は?」
Aが応えたと思ったら、直ぐにまた違う問いを投げつける。
今回の質問はAにとって不都合だった様で、バツが悪いそうな顔をした。
「…あり、ません」
太宰はその一言を頭で理解した時、でしょうね、と云うように頷く。
Aはスプーンを置いて、ごめんなさい、と謝罪の言葉を口にした。
「はーいすーぐ謝らない。
でも、ちゃんと食べ給えよ」
置かれたスプーンを手に取り、Aの御飯を掬う。
その掬われた御飯をAの口元に近づけた。
困った様に固まるのを見て、少し笑いながら
口を開きなさい、と伝える様に太宰が口を開いた。
Aはしぶしぶ、口を開く。
「はい、あーん」
「!?!?」
あーん、という言葉を聞いて、食べさせて貰おうとしている、と理解し顔を赤くするA。
そんなAを他所に、口の中にスプーンを突っ込む太宰。
Aは流れに任せて、スプーンで救われた御飯を口にし、スプーンが口から抜ける。
赤くしながらも食べているのを見て、太宰は満足そうに笑った。
「美味しいかい?」
同じ質問をすれば、Aは驚いたように口を開く。
「美味しい、です、!」
同じ食べ物なのに、同じスプーンなのに。
何故か、味の無かった御飯が美味しく感じたのだ。
その事にAは驚きながら、微笑む。
「凄く、美味しいです、」
「うふふ、私が少し魔法を掛けたからね」
"魔法"。
"魔法"とは、心の魔法かもしれない。
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寝静まる朝の二時。
月にも照らされない、静かな部屋に向き合った状態で布団に入る二人。
Aは、今日の事件の事でいっぱいになっていて眠れていない。
自身の近くで尊い命が一つ消えたのだと、理解していたからだ。
二度目だと云っても、人間が正気を保てるようなものでは無い。
逆に、ここまで見ていて、カウンセリングを受ける程では無いのが奇跡かもしれないし、ただの偶然かもしれない。
震える手で、布団をぎゅ、と握る。
と、その手を上から体温が包んだ。
体温とは、太宰の手で、太宰も起きているようだ。
「おやすみ、Aさん」
Aが眠りに落ちるまで、太宰は背中を撫で続けた。
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gross - 面白いです… (1月8日 10時) (レス) @page37 id: 52a16cf4dd (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 面白すぎる!続きが楽しみです! (5月29日 2時) (レス) @page36 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2023年4月16日 17時) (レス) @page18 id: 71114ebb82 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 太宰さんナイスです!続きすごく気になります!頑張ってください! (2023年4月14日 23時) (レス) @page15 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
シュークリーム - すごく素敵なお話だと思います!続き待ってます! (2023年4月12日 16時) (レス) @page6 id: ece26d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おりがみ | 作成日時:2023年4月11日 14時