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# 拾 ページ3

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誰かが私の目の前で蹲った。
目を開いて相手を見ようと顔をあげる。

すると相手は手を私に伸ばしていた。
殴られる、そう本能的に思ってしまい目をぎゅっと瞑った。

頬に自分の体温より暖かい手があてられる。

傷が痛むので、肩を震わせた。


「…お嬢さん、名前は?」

「えっ、と…」

「私は太宰。太宰治だ」


先に名を名乗る相手を見て、敵意は無いと感じる。
…否、解らない。名乗っただけで、本当は酷い人なのかもしれない。

口を開かない儘、瞼を上げて相手の顔を見る。

太宰治様。
男性で、ぼさぼさな茶色い髪の毛、茶色いコート。

彼の目を私は見れなかった。
元々、人の目を見るのが苦手な私だが、今回はそういう訳では無い。彼のあの目だから見れなかった。

何故かはわからない。
ただただ、彼の首元を見詰める。


「…警戒するに決まってるか。

お嬢さん、帰る場所はあるのかい?」

「あ、あります」

「じゃあ、お金は?」

「あります、」

「…帰る気はある?」


彼が問うてくる質問には順調に応えていた筈だが、その質問だけは直ぐに応えられず口を噤む。

矢っ張りね、と云って私の頬から手を離した。


「私についておいでよ」

「…え?」


驚いて彼の目を見た。
先程まで笑顔だった彼の表情が無になっていたので、思わず頭を下げる。

否、その前にお誘いの返答をしないといけない。
ついておいで、というのは家に、という事だろうか。
それとも、告白と同じようなあれだろうか。

返答に困り、声を出しても母音しか発せなくなる。


「…大丈夫、返答はしなくて良い」


口元に手を添えられる。その儘、顔を上げさせられた。
彼は優しい目で微笑んでおり、少しだけ安心する。目を瞑り、彼が息を吸う。

そして、口を開いた






「私に君の一ヶ月をくれ。

其の一ヶ月でこの世界に希望を見いだせなかったら私と心中しよう」







*

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gross - 面白いです… (1月8日 10時) (レス) @page37 id: 52a16cf4dd (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 面白すぎる!続きが楽しみです! (5月29日 2時) (レス) @page36 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2023年4月16日 17時) (レス) @page18 id: 71114ebb82 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 太宰さんナイスです!続きすごく気になります!頑張ってください! (2023年4月14日 23時) (レス) @page15 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
シュークリーム - すごく素敵なお話だと思います!続き待ってます! (2023年4月12日 16時) (レス) @page6 id: ece26d42b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おりがみ | 作成日時:2023年4月11日 14時

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