# 恐 ページ15
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「今日も疲れたわね」
「そうですね」
お店の前にある花壇の前に座り、小さい声で先輩と話す。
話している先輩は、私が一番お世話になっている人で、頼りになる人だ。
仕事覚えの悪い私を厳しく教えて下さる先輩。
私にはそのくらいが調度良い。
先輩は、スマホを取り出すと弄り始める。
ので、私は景色を眺めた。
夜で街灯が道を照らしている。
残業している人によって造られた綺麗な夜景。
偶に道路を走り抜ける車。
風は冷たいが、迚気持ちが良かった。
目を瞑り、今日の仕事の事を思い出す。
接客が少し下手だったので改善してゆきたい。
太宰さんの家に着いたら…否、帰ったら、"副業"の方も進めなくてはいけない。
家に帰ってやる副業は人のストレスや悩みを電話やチャットで聞くもの。所謂"愚痴聞き屋"というものだ。
収入は安定しないが、副業としては善いほうだ。
依頼は来ている為、話させて頂くのだが
電話での対応を希望している為、家の中ではできない。
ので、家の外で聞くことにした。
音質は悪くなってしまうが、夜のため音はあまり聞こえないはずだ。
頑張ってお金を貯めて、彼に渡さないといけない。
…彼?
彼ではなく、太宰さんだ。
そう、私は太宰さんにお世話になった分の倍返すのだ。
彼にはもう棄てられた。棄てられて当然だった。
彼もう居ない。
居ないのだ。
…太宰さん。
頭の中に太宰さんのあの笑顔が浮かぶ。
そして、今朝の___
「…ッ!?」
後ろに気配を感じた。
振り返り見てみるも、誰もいない。
先輩が、どうしたの?と聞いてきたので何でもないと答えた。
勘違いだ。そう、勘違い。
映画の見すぎだ。
再び目を瞑り落ち着こうとすると、先輩が立ち上がった。
驚いて肩を震わせる。
「バス来たわ。じゃ、お疲れ」
「あっ、え、お疲れ様でした!」
鞄を乱暴に持つと走って私の見えない処まで行ってしまった先輩。
隣に人が居ないと理解した途端、酷い恐怖を感じる。
鳥肌が逆立ち、指の間や背中に汗が流れる。
誰だ、誰だ
私の後ろにいるのは。
恐い、恐い、恐い
恐くて声が出ない。声を出したくて口を開くが、ひゅ、と喉が冷たくなるだけで声が出ないのだ。
何がそんなに恐い。何がそんなに心配なんだ。
何が、何が嫌なんだ。
解らない、解らない。
ただ、ただ恐い。
助けて、助けて
太宰さん、
「だざ、ぃさ…ッ」
頭の上に温もりを感じる。
「はーい、太宰さんだよ」
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gross - 面白いです… (1月8日 10時) (レス) @page37 id: 52a16cf4dd (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 面白すぎる!続きが楽しみです! (5月29日 2時) (レス) @page36 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2023年4月16日 17時) (レス) @page18 id: 71114ebb82 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 太宰さんナイスです!続きすごく気になります!頑張ってください! (2023年4月14日 23時) (レス) @page15 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
シュークリーム - すごく素敵なお話だと思います!続き待ってます! (2023年4月12日 16時) (レス) @page6 id: ece26d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おりがみ | 作成日時:2023年4月11日 14時