# 仕 ページ14
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「じゃあ、気を付けて行ってくるんだよ」
家の前でそう云いながら、心配してくださる太宰さん。
頭を下げてお礼の言葉を口に出す。
「はい!ありがとうございます」
「うん。迎えには行くから、仕事終わったら教えてね。住所も教えて」
「…あれ、連絡先教えましたっけ?」
「あ」
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太宰さんの家から行くのは初めてだったので、マップを頼りに向かう。
近くになればなる程、人混みが多くなり車の数も増えてゆく。
知っている道になったので、スマホの電源を落としポケットに入れる。
裏口から来いと先輩から云われたので裏口への道を歩く。
人通りが少なくなり、騒がしさはあるが、表より静かだ。
扉の前に着き、壁に着いている暗証番号を打ち込む処に「0624」とここの創立記念日を打ち込む。
すると、カチ、と小さい金属音が鳴ったので扉に手を掛けた。
重いが直ぐに開いて、中は控え室だった。
中に入ると直ぐに先輩が駆け寄ってくる。
「あ!来た!A!」
「先輩、お疲れ様です」
「お疲れ様ですじゃないわよ!おはよう!」
「おはようございます!本当にすみませんでした」
上半身を前に倒して謝罪をすると、先輩が溜息をついた。
嫌われた、と唇を紡げば先輩は、嫌った訳じゃないから、と一言云って下さる。
気を遣ってくれているんだ。
「ほら早く着替えてらっしゃい」
「はい!」
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「先に失礼します〜お疲れ様でした〜」
「お疲れ様でした!」
営業時間を過ぎて、控え室から店員が次々と出て行く。
着替え終わった私はスマホを見て、口角を上げる。
太宰さんが今から行くとの事だ。
「ふふっ…」
嬉しくなり、つい笑ってしまうのだ。
私の事を心配して呉れる人も、大切だと云って呉れる人も、ここまで迎えに来て呉れる人も、太宰さんが初めてだった。
初めての事をするのは恐い。
だが、それに負けないくらい楽しくて幸せなのだ。
「ちょーっと、なーにニヤけてんの」
「ビェッッ!?!?」
後ろから声をかけられ心臓が止まりそうになる。
声を掛けてきたのは先輩で、胸を撫で下ろしながら、なんでもないです、と云う。
「あれ、帰らないの?」
「嗚呼、はい。迎えに来てくれる人がいるので」
「真逆…彼氏!?」
「ちっ、違いますよ!」
仕事の時とは違う笑顔を見せる先輩。
外で一緒に待ってようよ。
そう言われたので、私は立ち上がった。
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gross - 面白いです… (1月8日 10時) (レス) @page37 id: 52a16cf4dd (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 面白すぎる!続きが楽しみです! (5月29日 2時) (レス) @page36 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2023年4月16日 17時) (レス) @page18 id: 71114ebb82 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 太宰さんナイスです!続きすごく気になります!頑張ってください! (2023年4月14日 23時) (レス) @page15 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
シュークリーム - すごく素敵なお話だと思います!続き待ってます! (2023年4月12日 16時) (レス) @page6 id: ece26d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おりがみ | 作成日時:2023年4月11日 14時