# 睡 ページ12
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用意して下さったバスタオルで髪の毛を拭きながら、お風呂を出ると、二枚の布団が少し離れて敷かれていた。
左側の布団の上で胡座をかいた太宰さんが、ちょいちょいと手招きをしてくる。
何か私に話だろうか。
早足になりながら、太宰さんの近くに立った。
「どうされました、?」
「取り敢えず、座って」
「は、はい」
座れと云われたので布団の近くに座ると、布団の上に、と細かく指示して下さる。
すみません、と一言云って布団の上に正座した。
「Aさん」
「はい!」
名前を呼ばれ、はきっと返事をするが会話が続かなかったので、戸惑う。
何か間違っただろうか。
きゅ、と服を握ると布団と布団の隙間をじっと見詰めた。
しんと静まり返った部屋に、服が擦れる程が耳に入った。
殴られるとかも。と思い目をぎゅっと瞑り痛みを待った。
だが、痛みは待っていてもやってこなくて、代わりに頭を優しく撫でられた。
「大丈夫、殴らないよ」
ふわりと髪の毛を梳かす様に撫でられ、眠気を誘われる。
太宰さんの優しい声が私の心を少しずつ安定させて、浮かせてゆく。
「Aさん…」
精神的な問題か、体力的な問題か。
直ぐに眠くなり、意識が飛びそうになる。
でも、太宰さんが小さな声で私の名前を呼ぶので
「…だ…ぁざ…さ」
「うふふ、だあざさんって誰だい?」
「ぅ……」
ぎゅっと外側から包み込まれる様に抱き締められ、太宰さんの体温がじんわりと伝わってくる。
背中の筋をなぞられ、腰と脇下あたりがぞわりとして震わせる。
愉快だと云う様に太宰さんの小さな笑い声が耳元で聞こえる。
「Aさん、私と___」
何と云っていたのか解らない。
太宰さんの表情も解らない。
ただ、一つ解ったのは
「おやすみ」
太宰さんが迚、嬉しそうだということ。
/ 太宰治 /
私の腕の中で眠っているAさん。
「…」
出逢ってまだ二日程しか経っていないというのに、警戒心のけの字もないAさんに、感謝半分に不安半分。
体をゆっくり倒してやり、私の太ももの上に乗せる。
そして、傷口にガーゼや包帯を着けてゆく。
全く起きる様子のない彼女を見て、口角が上がる。
愛想笑いでもない、適当にあしらう笑いでもない。
ただ単純に、彼女が可愛らしくて、愛おしくて自然に笑ってしまうのだ。
「……ふふ」
私はこの子の事が_________
*
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gross - 面白いです… (1月8日 10時) (レス) @page37 id: 52a16cf4dd (このIDを非表示/違反報告)
落蕾 - 面白すぎる!続きが楽しみです! (5月29日 2時) (レス) @page36 id: 32354343cf (このIDを非表示/違反報告)
あいす - 面白いです!続き楽しみにしてます!! (2023年4月16日 17時) (レス) @page18 id: 71114ebb82 (このIDを非表示/違反報告)
文ストオタクの一般人 - 太宰さんナイスです!続きすごく気になります!頑張ってください! (2023年4月14日 23時) (レス) @page15 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
シュークリーム - すごく素敵なお話だと思います!続き待ってます! (2023年4月12日 16時) (レス) @page6 id: ece26d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おりがみ | 作成日時:2023年4月11日 14時