39 ページ41
・
夏直前になった、太陽の照りつける午後。
気が向いたから学校に行った、そんな日。
座席表を見て隣の席のやつを確認した。
『あ、灰谷くん。』
声がして振り向いた。
驚いたように目を丸くして、それから柔らかく微笑む。
『隣の席だよ、よろしく』
へえ、としか答えられなかったけど。
きっと、俺がAと話してることが多いから隣を任されたんだろう。
『学校来たんだ。嬉しい。』
「…なんで？」
『隣の人居ないと寂しいじゃん』
もうチャイムがなるからと、彼女は俺の手を引いて席まで進んだ。
俺の手を掴むその小さな手をただ見つめる。
あまりにも細くて白い腕は少し触れれば散ってしまいそうだった。
「なあ、ちゃんと飯食べてんの？」
『食べてるよ』
小さな笑い声が前を歩く肩越しに聞こえてくる。
ざわめいた教室も鳴ったチャイムも俺の耳には入らない。
『なにー？心配してくれるの？』
振り向いて笑う綺麗な彼女に、
目の前の彼女に、
ただ、心を奪われた。
・
・
一瞬の間にフラッシュバックした
巻き込んだくせに、やっぱり、出会えてよかったなんて。
ふつふつと、奥底から込み上げる。
彼女の微笑みや、仕草、その全てが大切で失いたくなかった。
路地を曲がりきったところで彼女のアパートが目に入る。
多分きっと、恋情は心の内に留めておくべきだったんだ。
いいやつと結婚して、子どもに恵まれて幸せに暮らすのを影から見るだけにしとけば。
欲張らずにいれば。
やっぱり、巻き込むべきではなかった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 743人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きええ - 泣きました (8月15日 20時) (
レス) @page44 id: cf5db4757e (このIDを非表示/違反報告)
マグロケーキ - こちらの作品の題名に惹かれ、最新話まで一気に読み進めてしまいました。読み進めていく内に、竜胆さんと彼女さんの関係と話の展開に胸がドキドキしっぱなしでした。私の生きている時代にこのような素晴らしい作品に出会う事ができてとても嬉しいです。 (2023年4月1日 23時) (レス) @page38 id: c32fd47087 (このIDを非表示/違反報告)
防弾チョッキ（初心者） - ﾎハァｯｯ⤴︎。え、え、りん・・・え？ちゅき。天才でつか？ (2022年9月10日 22時) (レス) id: 16da95312d (このIDを非表示/違反報告)
莉夢#梵天の信者(プロフ) - あぁ、、、好きです、、、(*‘ω‘ *)文才力仏。 (2022年9月10日 15時) (レス) @page33 id: 9e38cf74ca (このIDを非表示/違反報告)
すけ。(プロフ) - 光華さん» わ〜！ありがとうございます！！シンプルに心に刺さりました嬉しいです(涙)ぜひぜひ楽しんでって下さい！ (2021年12月26日 7時) (レス) id: ed5ef07a0c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：澄芥 | 作成日時：2021年11月8日 20時
