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呪詛師の影か、人間と同等、もしくはそれ以上の知性を持った呪霊の影か。そのどちらかだと断定するには、まだまだ判断材料が足りない。
それに凄惨な現場となっていたあの場所で、彼女だけが無傷で済んでいた事も気になった。
――ともなれば、今回の『鍵』となるAを、みすみす見殺しにするだなんて馬鹿な真似はするはずもなく。


全く面倒臭い案件が舞い込んでしまったものだと、僕は背もたれへ体重を預けて深く深く息を吐いた。少し離れた場所で衣擦れの音がする。


「えっ、と、……本を……」


「本?」


「は、はいぃ」


いきなり何の話だ、彼女と本の話なんてしていたっけ。短時間のうちに考え込んでしまったからか、つい数分前の事が思い出せない。


「えと、その。外出の理由は、本を買いに行くためで……」


「あ、そ……」


ソファの背もたれに掛けていた腕がずるりと崩れた。そんな事のためにこの子は、僕の言い付けを破ってその命を危険に晒したというのか。
馬鹿にも程がある。


「先日サイン会に当たって、そ、それで、開催日が今日で……丁度この隣の市だったので、行ってしまいました」


最早ため息が出てしまいそうだ。くだらない。サイン会だって、生きていればいつかは行けるだろうに。それなのに、ご丁寧にも裸と半ば同義な状態で外を出歩いたと。


呪力のコントロールも式神の召喚も、呪符を用いた結界の展開さえAは出来ない。まだ教えていないのだから当然だ。
そんな無防備な人間が強烈な呪力の匂いを纏って歩いているのだ、呪霊側からすれば格好の餌というものである。


「何か行動を起こすのなら僕に一言言って。把握してない事されて困るのは僕だし、実際今回急いで君の所に向かったからね。疲れてたのに」


「そう、ですよね。……すみません、ごめんなさい」




イライラする。




「迷惑なんだよ、勝手な事されるの。今日だって僕は君に関する書類やら何やらを終わらせたってのに、肝心のAはご機嫌にサイン会行ってた訳でしょ? 笑っちゃうね」


相手は子供だ。今口にしているそれらはこの上なく大人気ない、八つ当たりにも等しい言霊だった。そんな事は重々分かっているし、僕はいい歳した大人なのだから、余計気を回す事となる前に早く口を閉ざさないと。




「勝手にすれば。死んでもいいなら好きに生きなよ、ほら」




ああ、どうして止まってくれないんだ。

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設定タグ:五条悟 , 呪術廻戦
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(プロフ) - こういうお話好きです...!これからも沖田妖狐さんのペースで頑張ってください!! (2022年2月12日 23時) (レス) @page19 id: ef9e4cc349 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沖田妖狐 | 作成日時:2022年1月10日 0時

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