【呪術廻戦】サヨウナラとこんにちはを今、君に。【五条悟】 (ページ17)

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「ああ、そう言えば。買い物行ってたらしいけど、何買いに行ってたの？言い付け破ってまで」

言葉尻へ向かうにつれて、Aの顔は青褪めていった。訊かれて何か不都合でも生じるのだろうかと一瞬頭に浮かんだけれど、彼女は今現在思春期真っ只中である事を寸前に思い出し、一応『言いたくないなら言わなくても』と気休め程度に付け加えておく。

「すみません……」

「謝るのはもういいって、聞き飽きたし。別に言わなくたって良いよ？僕だってそんな、嫌がる子に無理矢理言わせる程良心持ってない訳じゃないしねぇ」

何を言ったとて訊いたとて一言目には『ごめんなさい』、『すみません』だ。ひたすらに聞いているこちらの身にもなって欲しいものである。
そもそもの話、どうして彼女はこんな風になってしまったのだろう。成長過程で無理を強いられてきたのか？
……まあ、僕には関係の無い話だけれど。

「えっと、その、う、うぅん……」

「だから別に、言わなくってもいいったら」

落ち着きなく指先を擦り合わせている少女の眼は、先程よりも瞬きの間隔を狭めている。狼狽している様子が手に取って分かった。訊いた僕がいいと言っているのだから、言えないのならばそうですかと大人しく受け取っておけばいいのに。
随分と頭の悪い子だなと、僕は胸中でそっと呟いた。

正直言ってこの子と時間を共にするのは苦手だ。扱いづらいし、何よりイライラしてしまうから。その臆病さが、その謙虚さが、その自己犠牲の精神が、一々僕の感情を逆撫でして心地が悪い。
それなら野へ放てばいい話だと他の人間は思うのだろう。けれど、数々の不可解な点や今彼女の置かれている状況を考えると、どうにもそれを実行するには未だ時間が足りていなかった。

Aには告げていないが、あの小規模と言える集落にあれ程の呪いが出現したのも、僕は少しだけ疑問を覚えている。呪い、呪霊は人間の負の感情から発生するものだ。黒い噂も怪しい人物も、確認した限り存在しなかった例の集落で一級呪霊が現れるのは不自然に思えて仕方が無い。

勿論集落、部落に高位の呪霊が現れる、という事例は今までにも幾度か確認はしている。然しそれらはやはり、『呪いに至る理由』がきちんと存在しているもので。

それがどうだ。今回の■■村には、そんなものひとつたりとて無いではないか。
僕には人為的な……誰かしらの思惑が絡んでいると思えてならなかった。