【d!】ごちゃごちゃの缶詰【中編集】 (ページ9)

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誰も知らないまっさらな環境で顔見知りが居ることはとても心強かったが、如何せん彼の圧が凄い。

朝は必ず私個人に向かって挨拶し、休憩時間になればランチに必ず私を誘う。夜は時間が合えば一緒に帰ろうと言ってきたり、ショッピとコネシマさんと久しぶりに飲むことになった時に、なぜかチーノ君も居たりした。

幸か不幸か彼と私の席は通路を挟んで背中合わせであり、隙あらば私のところに来て、必要ないであろうにもかかわらず、簡単な書類の確認をお願いしてきた時だってあった。最後のは私の仕事の邪魔にもなるのでやんわりと苦言を呈せばすぐになくなったのだが。

　彼がなぜこんなにも良くしてくれるのか、瓶底メガネの下に隠された瞳から感情を察することはできなかった。

ショッピと仲の良い彼の事だから、おそらくショッピと関わりのあった私のことを気遣ってコミュニケーションを図ってくれているのだろうが、何せ彼は期待の新人・営業部のホープ君である。加えて容姿端麗、社交性は言わずもがなときた。男女問わず人気な彼が女子の注目の的でないわけがない。

何度も女子の鋭い視線に気づかないふりをしながら何事もなく仕事をこなしてきたが、最近になって彼女たちが動き出した。私に仕事を押し付けてくることが増えたのだ。

営業部に異動してきて半年は経つが、他人の仕事をするほど余裕があるわけではない。文句を言うにも1対複数人では相手にならず、渋々仕事を受ける日が相次いでいた。

それに比例して残業する日も多くなり、自分の時間が減ってストレスの溜まる日々。

そのおかげで彼と共に帰る時間が減る…と思いきや、高確率で彼は私の残業を手伝ってくれる。ありがたいが、事の原因の彼に手伝って貰うのは避けたいことだった。最近はやんわりと断って、彼を先に帰すようにはしている。

　今日も、彼からランチを誘われたが、そのタイミングで部署の女子が割って入って彼を強引にランチに誘っていたため、そちらを優先するように言ったばかりだ。彼は不満げな顔をしてその子とランチに行ったが、こっちとしてはありがたかった。それから、台風の目が去って一息つこうと自販機に行ったところ、喫煙前のショッピと出会ったのだった。