【d!】ごちゃごちゃの缶詰【中編集】 (ページ6)

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茹だる瞳に蓋をして〔橙色〕ページ6

※ciよりsypの方が出番多いです。それでも許せる方はご覧ください。

「偶然ですね。Aさん」
「…ショッピ」
「お久しぶりっす。つっても２週間ぶりくらいっすけど」

自動販売機にお金を入れてボタン前で指をさまよわせていれば、横から微かなたばこの匂いに乗せられて、気だるげな声が私に投げかけられた。反射的に横を向けば、軽く頭を下げてショッピが挨拶をする。彼の片手にはショートピースとライターが握られており、そういえばここは喫煙所前の自販機であったことを思い出した。

「…もうお昼の時間なのに、相変わらずね」
「もうこれが昼食みたいなもんなんで。吸わんとやってられんでしょ」

さも当たり前のように言う目の前の男に諦観の眼差しを送ることしかできなかった。

死ぬほど忙しくない限り、三食きっちり食べなければやっていけない私と彼では、これに関しては一生分かり合えることはないのだろう。だがいくら何でも不健康すぎる。

私が部署を異動してからも社内でよく彼には会うが、見るたびに痩せていっている気がする。

私が彼と同じ部署だった際には、入社したばかりの彼の教育係としてずっと付いていたため、コミュニケーションもかねて昼食も半ば無理やり連れて行っていた。

　零れそうになるため息を飲み込んで、彼にこの後の予定を聞けば、喫煙後のことは特に頭になかったようで、近くのコンビニに行ってウィダーでも買おうか、と彼らしい答えが返ってきた。

自然と眉間に寄ってしまった皺を抑えながら、喫煙所内の時計を確認すれば、残りの昼休み時間は40分ほどであった。外での食事は無理と判断し、自販機のカフェラテのボタンを押しながら、一緒に社食で昼食を取らないかと誘えば、軽い返事で了承してくれた。

じゃあこれ机に置いてくるから、10分くらいしたらまた来るねと彼に言って、久しぶりの可愛い後輩との昼食に少し気持ちを弾ませながら、その場を後にした。