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屋上の扉を開けた瞬間、コネさんがどうして俺に別の場所での昼食を提案したのかすぐに察した。
風と共に流れ込んでくる野球部の掛け声に、彼女の顔が少しだけ輝いたのが分かった。
暑いという彼女に別の場所での昼食を提案するが、案の定彼女は屋上に足を踏み入れた。冷静でなかった数分前の自分を恨みつつ、自分も彼女に続いて屋上に行く。
燦燦と照らす太陽の下、よいしょ、と腰を下ろした彼女の首筋には汗が光っており、思わず唾を飲み込んだ。
そんな俺に気づくこともなく、彼女は能天気に自分の弁当箱を開ければ、少し穴が開いているが、綺麗に卵が巻かれたオムライスが顔を出した。右手の人差し指についている真新しい絆創膏が目に入り、なんとなく、こいつが作ったんやろうな、と思ったが、確信はつけないため、とりあえず聞いてみれば、どうやら正解だったらしい。流れるように弁当を作ってもらう言質を取り、内心ガッツポーズを決めた俺は、急に彼女が弁当を作り出した理由をなんとなく察していた。
しかし、自分の予想が間違っていることにどこか淡い期待を抱いて尋ねてみれば、彼女の反応から自分が正解をたたき出したことが分かり、落胆する。それと同時に、すこし頬を赤らめる彼女に苛立ち、思わず鋭い言葉を投げかけてしまった。
「料理系女子アピしたって、いつアイツに食わすねん。告白せな、獲られてパーやで」
自分の言葉に自分の胸が痛む。特大ブーメランってやつか。と心のなかで自嘲する。
こんなに長年想いを燻らせとるやつが何言っとんねん。と心の中で自分にツッコむが、こいつの綺麗な手に傷がついているのに、心配の言葉もかけられない自分は相当こじらせているのだと、改めて実感して悲しくなる。
「俺やったら、ガサツなそのままのお前でも、ずっと愛しとるで。」なんて、言えたらどんなに楽だろうか。ガラでもないことを考えている自分が恥ずかしくなって、白飯を乱暴に掻きこんだとき、下から聞き覚えのある声が耳に入った。
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作者名:白詰クサ | 作成日時:2024年2月26日 23時