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「ごめん。ほんまに、ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんよ…。いや、実際、やってもうたんやけど…。」
頭を下げて謝罪する彼女に、シャオロンは「いや…」と後頭部を右手で掻きながら、あー、うー、と唸る。
「ま、ええわ。とりあえずこっち来い」
ん。とシャオロンがフェンスにもたれかかり、隣をぱしぱしと叩く。今すぐにでもここから逃げ出したいAはいや…と言いよどむが、シャオロンのどこか真剣な面持ちに口を噤む。
先ほどの罪悪感も相まって、しぶしぶといったかたちで扉をまたぎ、どこかよそよそしく彼の隣に身を寄せ、傍らに背負っていたカバンを置いた。
生温かい風が彼らの頬を撫でる。
ひらりとはためいたスカートから、彼女は自身の脚が目に入った。先程の子とは正反対の、鍛えられた筋肉質な脚。思わず、膝丈ほどのスカートを、両手で押し伸ばした。
沈黙が続き、スカートをいじり始めた彼女に向かって、先に口を開いたのはシャオロンだった。
「バッグなんか持って、なんでここまで来たん？」
急な問いかけに小さく肩を跳ねた彼女だったが、シャオロンの方をちらりと見て、バッグを見ながら答える。
「あ…いや、ロボロ待っとってな。教室騒がしくて、勉強も集中できひんから、気分転換にー思って、屋上来たんよ」
まさか、告白現場に遭遇するとは思わんかったけど…と心のなかで呟いた彼女は、ふーん。と茜色の空を見ながら答えるシャオロンを見つめる。
先程から、胸が高鳴って仕方なかった。
何も知らずにこの状況になっていたら、彼女の心は幸せでいっぱいだっただろう。しかし、シャオロンの気持ちを知ってしまった今、彼女にとって自身の胸の鼓動はとても苦しいものであった。
大きな雲は、未だに夕日を隠している。夕日に照らされていない彼の表情は、どこか暗いように感じた。
「いつもロボロ待っとるん？」
「え…うん。基本的には、帰りはいつも一緒やね。家、隣やし。部活も、お互い運動部やから、時間もそんなズレへんし」
あー、なるほどなぁ。と答えたシャオロンの視線が地面に移る。そして、スカートをいじる彼女の指先に視線を移し、再び口を開いた。
「指、どうしたん？」
「指？あ、」
今朝、下手くそな包丁さばきで付けた傷を隠す絆創膏の存在を思い出す。傷を隠すはずのそれが、自分の不器用さとガサツさを彼に見せつけているような気がして、彼女は思わず右手でそれを隠した。
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作者名：白詰クサ | 作成日時：2024年2月26日 23時
