【d!】ごちゃごちゃの缶詰【中編集】 (ページ28)

今日:30 hit、昨日:13 hit、合計:7,968 hit

＋ページ28

シャオロンに、好きな人が居る。

それもあれほどかわいい女の子よりも魅力的なひと。

そんな相手に、勝ち目などあるのだろうか。ただぼうっとそんなことを考えているAの前で、女の子がはらはらと涙を流しながら口を開く。

その人ってどんな人なの。シャオくんは、そんなにその人のことが好きなの。

風に乗せられて聞こえてきた女の子の言葉は、Aの心のほんの片隅にあった言葉を代弁したものだった。してはいけないと思っていても、思わず耳をすましてしまう。

シャオロンは少し目を見開いた後、半そでのワイシャツから覗く焼けた首元を右手でさすりながら、俯いたまま答える。

「好きやで。あいつは、俺にとっての太陽や。」

夕日に被さる雲の影で彼の顏は、彼女からは良く見えなかった。しかし、はっとしたような顔をして、くしゃりと顔を歪めた女の子が、小さく「ごめん。」と呟き、扉の方に走ってきた。いきなりのことで反応が遅れたAは、パニックになってその場であたふたしてしまい、逃げるのが遅れてしまった。

そうこうしているうちに無情にも扉は大きな音を立てて開き、彼女は下を向きながら涙を流して走ってきた女の子とぶつかってしまった。
しかし、女の子はAの顔を見ることもなく、震えた声ですみませんと謝ると、階段を駆け下りていった。

その後ろ姿をぼうっと見つめていたが、直ぐに冷静になった彼女が、はっと後ろを振り返る。

「…A？」

　開いた扉の向こうで、向日葵色の瞳を大きく開かせたシャオロンが、彼女の名前を呼んだ。