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目を逸らしてきた事実を、彼が真正面から照らす。


見え透いた私の好意を真っ向から否定することなく、隣に居続けることを赦してくれた彼に期待した。
あの日、彼に振られた日、彼がこちらを見ずに突き放してきた事実に期待した。


沈めたはずの気持ちが気泡となって浮かび上がって空気に溶けていく。彼の空色の瞳が眩しすぎて、後ろで傍観している鬱に助けを求めようと視線を送るも、彼はただ笑みを浮かべるだけ。



「違うやつを選んでも、永遠に不変の…お前のその愛が、俺はずっと欲しかったんや」



愛おしそうに、しかしどこか悲しげに揺らめく陽だまりの空に、私は思わず手を伸ばしてしまった。


あぁ、海に溺れて、彼への愛情が捨てられぬ、醜い姿の私を、この綺麗な空に写したくなかったのに。
私を受け入れてくれた、広大な海の上に、醜い姿を浮かばせたくなかったのに。


ひどく悲しくなって、目から涙がこぼれる。私が伸ばした手を彼は優しく掴むと、この数年間の隙間を埋めるように、噛みつくようなキスをしてきた。


リビングから漏れてくるたばこの煙が気にならないほど、私たちはその行為に夢中になっていた。


彼の体温が私から離れたのを機に、後ろの足音が私に近づいてきた。名前を呼ばれて、ゆっくりと顔を上げれば、数センチ先には鬱の顏。思わず瞼を閉じれば、涙でぬれたその上にやさしくキスを落とされた。



「ふふ、やぁっと堕ちてくれたんやね」
「ぇ?」



何のことかわからず、恐る恐る目を開ければ、恍惚とした笑みを浮かべた彼がそこにいた。状況に合わない彼の行動と表情に、得体のしれないナニカに出会ったような悪寒が体を駆け巡る。


「僕はね、君が思っとるほど綺麗やないんよ。汚い男やねん。純粋なほど一途で、綺麗なAちゃん。君は僕にとって綺麗すぎたんよ。でも…んふふ、これでやっと、真っ白な君やなくなった。」


鬱と結婚してもなお、存在していたコネシマへの愛を自覚し、結果彼を受け入れた。君は、自分と同じところまで穢れ、堕ちてくれたのだと、彼は酷く嬉しそうに私を強く抱きしめた。


海の汚れも、深海の恐ろしさも、空の冷たさも、息苦しさも知らない、無知な女。私は、彼らの黒く、荒んだところなど知る由もなかった。



「どんなに汚くて醜いAちゃんでも、俺は愛すで。どこまでも一緒に沈んで、堕ちていこうや。」



3人で、な。

そう呟いたのは海か、空か。私を抱きしめる彼からは、いつものたばこの香りがした。

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作者名:白詰クサ | 作成日時:2024年2月26日 23時

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