【d!】ごちゃごちゃの缶詰【中編集】 (ページ15)

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結婚式と披露宴を終えて、飲みの誘いも断り、早めに帰宅した私たちは、結婚式で会った旧友達の話や、式で起こった面白いハプニングやイベントを振り返り、笑い話に花を咲かせていた。

鬱の親友であり相棒であったはずの彼が最後まで式に参加していなかったことが気がかりだったが、鬱が話題に挙げてこなかったため、疑問を胸にしまい込んで、他の話をして気を紛らわしていた。

夜の10時ごろだった。

ピンポーン、と静かな夜に合わない軽快な電子音が部屋中に響き渡った。夜遅くに来る尋ね人を不審に思った私は、TVドアホンでその姿を確認しようと腰を上げた。すると、結婚式での写真を見返していた彼が、スマホに目をやったまま、おもむろに口を開いた。

「俺の知り合いや。外も冷えるやろうし、直ぐに扉開けてやり。」

そう言う彼に何の疑問も抱かずに、玄関に足を運ぶ。かちりとなったライターの音に、「ベランダ」と呼びかければ、ソファーと布がこすれる音がした。

それに少しため息をつきながらも、足はそのまま玄関に向かう。

知り合いなんて、誰だろうか、とのんきな頭のまま扉に手を伸ばしてしまった。アルコールの入った頭では、なぜ鬱が「知り合い」だと、わざわざ名前を言わなかったのか、いつもならドアホンを確認するのを止めるような行動を取らない彼が、今回は確認させようとしなかったのか、疑問に思うことはなかった。

扉を開ける前にかすかに感じたのは、鬱が吸っている煙草の匂い。

開けた扉の先にいたのは、式では見ることのなかった、空色の彼だった。