+ ページ12
困惑の声を上げたのは私だけではなく、横のチーノ君もだった。チーノ君は時が止まったかのように体を硬直させており、その反応は、ショッピの言葉が真実であることを如実に表していた。その彼の様子で、今までの私に対しての彼の行動すべてに合点が行き、驚きで思わず言葉が漏れ出てしまった。
「…え?チーノ君って私の事好きなの?」
それを横の彼に尋ねれば顔を真っ赤にして椅子からがたりと立ち上がる。
この状況を作り出した当人は私の発言に腹を抱えて笑っており、「そんなw直接本人に言うやつwwおるんやwww」とヒイヒイ言いながら机に伏している。
ショッピをどうシバくかを頭の片隅で考えつつ、目の前の彼を見やれば、いつもの笑みは剥がれていて、真っ赤に茹だる顔と、ずれた眼鏡の隙間から見える、橙色の瞳に、どこか冷静な頭が、綺麗だな、なんて感想を浮かべる。
はくはくと魚のように開閉させていた口をぎゅっと閉じ、恐る恐る開いた口から、小さく言葉が漏れだす。
「…だよ」
「え?」
上手く聞き取れなくてもう一度聞き返せば、真っ赤な顔の彼が顔を顰めながら、半ばやけくそに叫ぶような形で私に言葉を投げる。
「そうだよ!!あんたのことが好きだって言ってんだよ!!悪いか!!!あんだけアピールしてなんで気づかんのや!!!」
Aさんの馬鹿!!と言いながら涙目でその場を去った彼を呆然と眺めることしかできなかった。
しかし、人が少なくなった食堂で彼の声はよく響いていたようで、ひそひそと好機の目を向けながら話をする周りの声で我に返り、ごちそうさまでした!と急いで手を合わせ、先ほどから笑い転げているショッピに「置いてくよ!!」と声をかけて早歩きで返却口まで向かい、流れるようにその場を後にした。
「ふふ、盛大な告白やったなー」
何もかも知っていた彼が笑いながら私の後ろを付いてくる。この愉悦犯の男を絞める考えを浮かばせる余裕のない頭は、先ほどの意図しない公開告白でいっぱいだった。
彼の瓶底眼鏡の蓋から溢れた恋慕の熱を、直に浴びて正気に居られるほど、私の心は強くなかった。
静かな私を不審に思ったショッピが私の顔をのぞき込めば、いつもは死でいる目を大きくぱちぱちと瞬かせて、ふんと鼻で笑った。
「相変わらずっすねぇ、先輩」
彼の熱にあてられて真っ赤な私の顔を、もう一度彼がのぞき込むことはなかった。
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白詰クサ | 作成日時:2024年2月26日 23時