岡山大雨特別警報【実話】 (ページ7)

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未来に向かってページ7

7月8日

少し、雨が弱まった。

まだ浸水している地域もある。

けれど、私の地域は氾濫も収まり、元に戻りつつあった。

どうやら救援物資も行き届いているらしい。

県外からも多くの物資が届いているらしく、感謝してもしきれない。

本当にありがとうございました。

＊＊＊

7月9日

市内の小・中学校は全て休校になった。

けれど私達の高校は休校にはならなかった。

『おーっす』

朝、学校に行ってみると、やはり人が少ない。

電車も止まっている所があるようで、交通手段がないようだった。

「私のとこ、床下浸水だったー」

「え、マジ？うちは無事だったよ」

教室の隅の方からそんな会話が聞こえてくる。

やっぱり、被害にあった人もいるんだ。

朝の読書時間が始まると、先生が突然口を開いた。

「皆さん、おはようございます」

まだＨＲは始まっていないのにも関わらず、先生は真剣な瞳でこちらを見る。

「こうやって今日、皆さんの顔が見れてとても安心しています。

　先生は週末、皆さんの事がずっと気になっていました。

　この高校には被害がとても大きい真備町から来ている生徒もいます。

　このクラスには真備町の人はいませんが、それでも心配でした。

　その席に座っている事が、当たり前であると思ってはいけません。

　学校の生徒の中にも、避難所で過ごしている生徒もいます。

　その事を忘れず、今生きていることに感謝しなければなりません。

　いつもの日常が、いつも通りに来ることは奇跡と同じです。

　この小さな奇跡のありがたみを感じて生きていきましょう」

全員が本から目を離して、先生の瞳を見つめていた。

誰も、何も音を立てず。

“当たり前は当たり前じゃない。“

“日常は日常じゃない。”

“今生きていること自体が奇跡。”

昔、そんな事を言っている人がいた。

その時は共感したつもりでいた私。

けれど、立場が違うだけでこんなにも違うように聞こえる。

この時私は初めて、自分が生きていることに感動した。

“生きること”の考え方が変わった、7月9日の朝。

その日は久しぶりに青空が広がっていた。

おかえり、晴れの国。